日本野生動物医学会誌
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原著論文
ニホンカモシカCapricornis crispus子宮壁動脈の妊娠性硬変-経産歴との関連において-
喜多 功鈴木 法子丹羽 範郎坪田 敏男
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1996 年 1 巻 2 号 p. 113-117

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抄録
成熟雌ニホンカモシカCapricornis crispus30頭の子宮壁動脈を組織学的に検索した結果, 経産カモシカの子宮壁動脈に妊娠性硬変が見出された。すなわち, 未経産成雌の子宮壁動脈では, 内弾性板は薄く, その屈曲は単純であったが, 1〜3産例の子宮壁動脈では, 内弾性板は厚く明瞭で, 複雑な屈曲を示していた。5産以上の例では, 子宮壁動脈に2層以上の弾性板様構造物が出現し, 中膜における弾性線維の増加と平滑筋細胞の核の変性が観察された。8産以上になると子宮壁動脈の中膜に弾性線維の変性(エラストージス)および平滑筋細胞の核の変性・消失が起こった。以上のことから, 子宮壁の組織学的検査によって, 産歴不明のカモシカ個体における経産の判定および経産回数の推定が可能と思われた。
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© 1996 日本野生動物医学会
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