日本野生動物医学会誌
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研究短報
チンパンジーの遺体を用いた第一中手骨内転運動のCT断層像観察
遠藤 秀紀吉原 耕一郎長谷川 寿一吉川 泰弘林 良博酒井 健夫伊藤 琢也鯉江 洋木村 順平
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2005 年 10 巻 1 号 p. 43-47

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抄録

CTスキャンを用いてチンパンジーにおける第一中手骨の把握時の内転運動を検討した。第一中手手根関節を基点に, 第一中手骨は内転し, その骨体は回転していることが非破壊的に確認できた。大菱形骨とその他の手根骨は第一中手骨内転時にも把握に意義あるような運動はしていなかった。第一中手骨の可動範囲は三次元的に見て, 第二中手骨よりも内側に限定されていた。チンパンジーの第一中手骨および第一指骨群は, ヒトといくつかの化石人類と比較して把握運動の機能性に乏しいとされてきたが, 今回のCT断層像は, チンパンジーの第一中手骨の運動と母指対向性が対象物の把握動作のために十分ではない可能性を示した。

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© 2005 日本野生動物医学会
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