日本野生動物医学会誌
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原著
グラントシマウマ(Equus burchelli bohmi)の腸結石の性状とその臨床(内科学)
釜谷 大輔石井 里恵今井 由美子橋本 渉河合 成直小田 伸一倉持 好岡田 幸助
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2010 年 15 巻 1 号 p. 37-44

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抄録

仙台市八木山動物公園で飼育していた15歳の雌のグラントシマウマ(Equus burchelli bohmi)が軟便と食欲不振を呈し,治療により一時回復したが,その後再び食欲不振となり死亡した。病理解剖では結腸内に大きさ14×12×11cm,重量1,400gの球状の結石が認められ,結腸は破裂していた。また,子宮内には胎子が認められた。病理組織学的検査では胃と十二指腸における粘膜上皮の剥離,消失ならびに炎症細胞の浸潤が認められた。結石の割面は肉眼的に層状を呈し,車軸構造で硬・軟部位が存在する核の部分と均質な外殻の部分に大きく分けられた。それぞれの部位から材料を採取して,元素分析を実施したところ,マグネシウム(Mg),カルシウム(Ca),リン(P)はどの部位も高い数値を示した。部位別でみると,カリウム(K),Mg,Pは外殻の一番内側の層で最も高い割合を示し,その一方でナトリウム(Na),Ca,鉄(Fe),マンガン(Mn),亜鉛(Zn),銅(Cu)は核の最外層にある軟らかい部分で高い割合を示した。今回の症例では,15歳と高齢であったにとから腸結石は結腸糞便内の異物周囲に沈着しやすいリン酸Caやリン酸Mgなどの結晶が長期にわたって徐々に沈着して形成されたと考えられた。その結石が腸の管腔を部分的あるいは一時的に閉塞した結果,食欲減退,糞便の性状変化・減少,腹部膨満の臨床所見を呈したと考えられた。

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© 2010 日本野生動物医学会
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