2010 年 15 巻 1 号 p. 31-36
エイ類はその興味深い形態学的特徴と行動から日本国内の水族館で多く展示されている。しかしながら,大型となることと尾部背側に鋭い棘を有することから,彼らの飼育および健康管理には危険が伴う場合が多い。したがって,このような作業を実施するには鎮静・麻酔を施す必要がある。本研究はウシバナトビエイ(Rhinoptera javanica)に対する2-phenoxyethanolの鎮静および麻酔効果について検討することを目的とした。オキナワマリンリサーチセンターで飼育されていたウシバナトビエイ合計12尾を供試し,それぞれ200,400,600ppmとなるように濾過海水で希釈した2-phenoxyethanolに浸漬した。特徴的行動と呼吸回数を5分ごとに観察し,実験終了後には供試薬剤を含まない海水中に移して覚醒までの時間を計測した。それぞれの実験は高水温時および低水温時に2回ずつ実施した。結果より,2-phenoxyethanolを用いてウシバナトビエイを安全に鎮静・麻酔するには,高水温時および低水温時ともに400ppmが最適濃度であると判断された。