日本野生動物医学会誌
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原著
異なる栄養条件下におけるニホンジカの成長過程 -丹沢山地に生息する野生個体と飼育個体の比較-
山根 正伸羽山 伸一白石 利郎吉村 格古林 賢恒
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1997 年 2 巻 1 号 p. 59-66

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抄録
神奈川県丹沢山地に生息するニホンジカ野生個体と同じ地域由来の飼育個体の体重増加, 出産の有無ならびに越冬期間の体重変化について比較・分析し, 食物条件の影響について考察した。この結果, (1)野生個体と飼育個体とも初冬における成獣(4歳以上)の平均体重は雄で約75kg, 雌で約50kgに達し, 顕著な性的二型が認められた。, (2)野生個体は飼育個体に比べて発育段階の体重増加と初産年齢に1年の遅滞が認められた, (3)飼育個体と野生個体の間の出生時の体重に有意差はなかったが, 両者に出生時期と出生時から0歳初冬までの期間の体重増加速度に違いがみられた, (4)越冬期間の体重変化は, 野生個体と飼育個体で異なり, 幼獣, 亜成獣雄および妊娠雌で違いが明瞭であった。以上の結果は生息地の食物条件の違いが, ニホンジカの発育段階の体重増加過程の影響し, 性成熟に到達する期間に影響することを示すものと考えられた。
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© 1997 日本野生動物医学会
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