日本野生動物医学会誌
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特集論文
九十九島の自然と海きららの取組み
川久保 晶博
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キーワード: 九十九島, 水族館, 調査
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2019 年 24 巻 3 号 p. 91-96

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抄録

 九十九島水族館の展示テーマである九十九島地域は,大小208の島々が九州本土に沿うように長崎県北西部の南北約20 kmの範囲に点在している。海岸線は複雑に入り組んだリアス海岸で,九州本土側と島を含めた海岸線延長は353 kmにも及ぶ。そのほとんどが自然のままの泥干潟や砂浜,岩場などで構成され,海岸線延長は288 kmもあり,九十九島の自然の豊かさを育む大きな要因となっている。自然のままの海岸にはそれぞれの環境に適応した多くの種類の生物が多数生息している。西海国立公園九十九島水族館(以下,海きらら)では,九十九島の自然について,①調査活動,②調査で得られた情報の整理・発信,③地域の人たちへの普及活動,④事業の実施,⑤保全活動を実施している。調査活動では,サンゴ類,海藻(育成を含む),カブトガニ,海岸動物,クラゲ,そして鯨類の調査などを実施している。それぞれの調査で得られた情報は,まず展示に反映し来館された方々へ分かりやすく発信している。また,国内や海外での学会における口頭発表やポスター発表,学会誌への投稿などで積極的に発信している。新聞・テレビなどマスコミにも調査結果を発信して,一般の方々にも分かりやすく情報を公開している。調査で得られた情報は,九十九島ボランティアガイドの研修,市民向け九十九島講座,児童向けレクチャー,出前講座,自然観察会などの地域の人たちへの普及活動に役立てている。同時に,水族館運営事業,遊覧船事業,動植物園運営事業,ビジターセンター運営事業,直営店事業にそれぞれ活用している。またこれらの事業で得られた収益を,調査活動や展示活動,情報発信活動に充てて持続性を保ちながら保全活動へとつなげ,調査活動を基点とした地域における水族館の存在意義を示している。

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