日本野生動物医学会誌
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24 巻, 3 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
特集論文
  • 木戸 伸英
    原稿種別: その他
    2019 年 24 巻 3 号 p. 85
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/11/25
    ジャーナル フリー
  • 亀崎 直樹
    原稿種別: その他
    2019 年 24 巻 3 号 p. 87-90
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/11/25
    ジャーナル フリー

     近年,水族館における研究活動が停滞している。そこで,水族館での研究活動の必要性や停滞する原因を分析した。国内では,1960年代に多くの水族館が設立され,集客の目的もあったが,設立者の理念としては,海や海洋生物を博物学的・生物学的に一般に普及したいとする教育的目的があった。また,当時は海洋生物の生態に関する情報も少なく,多くの市民の関心を呼んだ。ところが,ある時代からか水族館がアミューズメントパークとして機能し始める。目的が教育からビジネスに移行したのだ。そしてビジネスを目指す人材がトップにたつと,研究は必要ではなくなり,むしろ邪魔なものになった。海洋生物についての研究は,社会全体で見れば活発ではあるが,その予算の大部分は主として食料となる水産資源となる生物を対象とした研究に費やされる。水産資源として価値のない生物はほとんど無視され,研究スピードは遅々としている。しかし,生物多様性の価値観は近年見直すべきだとする思想は,現代社会の潮流となっている。水産資源ではない海洋生物を,純粋な博物学的な価値観で扱える施設は水族館だけである。水族館は海や川に関する学問を一般に普及するために重要な役割を担っている。また,それを実行するためには研究が必要不可欠である。

  • 川久保 晶博
    原稿種別: その他
    2019 年 24 巻 3 号 p. 91-96
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/11/25
    ジャーナル フリー

     九十九島水族館の展示テーマである九十九島地域は,大小208の島々が九州本土に沿うように長崎県北西部の南北約20 kmの範囲に点在している。海岸線は複雑に入り組んだリアス海岸で,九州本土側と島を含めた海岸線延長は353 kmにも及ぶ。そのほとんどが自然のままの泥干潟や砂浜,岩場などで構成され,海岸線延長は288 kmもあり,九十九島の自然の豊かさを育む大きな要因となっている。自然のままの海岸にはそれぞれの環境に適応した多くの種類の生物が多数生息している。西海国立公園九十九島水族館(以下,海きらら)では,九十九島の自然について,①調査活動,②調査で得られた情報の整理・発信,③地域の人たちへの普及活動,④事業の実施,⑤保全活動を実施している。調査活動では,サンゴ類,海藻(育成を含む),カブトガニ,海岸動物,クラゲ,そして鯨類の調査などを実施している。それぞれの調査で得られた情報は,まず展示に反映し来館された方々へ分かりやすく発信している。また,国内や海外での学会における口頭発表やポスター発表,学会誌への投稿などで積極的に発信している。新聞・テレビなどマスコミにも調査結果を発信して,一般の方々にも分かりやすく情報を公開している。調査で得られた情報は,九十九島ボランティアガイドの研修,市民向け九十九島講座,児童向けレクチャー,出前講座,自然観察会などの地域の人たちへの普及活動に役立てている。同時に,水族館運営事業,遊覧船事業,動植物園運営事業,ビジターセンター運営事業,直営店事業にそれぞれ活用している。またこれらの事業で得られた収益を,調査活動や展示活動,情報発信活動に充てて持続性を保ちながら保全活動へとつなげ,調査活動を基点とした地域における水族館の存在意義を示している。

  • 伊藤 寿茂
    原稿種別: その他
    2019 年 24 巻 3 号 p. 97-103
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/11/25
    ジャーナル フリー

     研究は博物館の社会的機能の一つである。研究の着地点は,調査や実験で得られたデータを解析し,論文として公表して長期間にわたる利用を可能にすることであり,途中で止めてしまった場合,従事者の個人的な鍛錬としか見なされない。動物園や水族館を含む博物館相当施設では比較的基礎研究を行いやすい状況にあるが,学芸員は多岐にわたる業務を抱えており,研究を行うための時間や労力を意識的に捻出する必要がある。著者の場合,イシガイ類幼生の生態解明をテーマに選び,いくつかの工夫を凝らすことによって,幾ばくかの研究を行うことができたので,その内容の一部を紹介する。博物館に限らず,所属機関の研究機能は,個々の職員が一学芸員として研究を重ねた結果として高まっていくものと考えている。人生の楽しみの一つとして研究を行うことを推奨したい。

  • 野田 亜矢子
    原稿種別: その他
    2019 年 24 巻 3 号 p. 105-108
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/11/25
    ジャーナル フリー

     動物園の4つの使命に数えられていながら,なかなか浸透しているとは言えない「調査・研究」であるが,近年少しずつ動物園の業績として表に出すところが増えてきた。しかし,時間を取ることができない,やり方がわからないなどの理由で,積極的に進められていないことも事実である。広島市安佐動物公園では,開園当初から動物園の使命の一つとして「調査・研究」を大々的に掲げ,様々な形で実践してきた。その一つが地元の自然に貢献しようとの思いで始まったオオサンショウウオの調査・研究事業である。また,各職員の調査・研究の成果をまとめる訓練として,園内職員を対象とした「飼育研究会」の開催および「飼育記録集」の編集が行われるようになった。本来,動物園における調査・研究活動は,このように「業務」として行うべきものであるが,実際には様々な面から難しいこともある。ひと昔前の動物園は単に珍しい動物を見て楽しむところだったものが,現在では先人たちの努力により「種の保存」などの言葉が一般にも浸透してきており,動物園の活動の一つとして広く認知されている。今後さらに「調査・研究」が動物園の業務の一つであることを,内外に浸透させていく必要がある。

  • 伊藤 英之
    原稿種別: その他
    2019 年 24 巻 3 号 p. 109-113
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/11/25
    ジャーナル フリー

     2008年に京都市と京都大学は,京都市動物園と京都大学野生動物研究センターをそれぞれの中核として,「野生動物保全のための研究と教育に関する連携協定」を締結した。本協定に基づき,京都大学の教員が京都市動物園に常駐し,研究・教育活動を実施してきた。2013年に学術研究と環境教育をより一層推進するために動物園内に研究・教育機関「生き物・学び・研究センター」を設置するとともに,当時京都大学野生動物研究センターの准教授が京都市動物園生き物・学び・研究センター長として着任した。2017年6月には文部科学省の競争的学術研究費である科学研究費等補助金(科研費)を申請できる「学術研究機関」として同省の指定を受けることを目指し,「生き物・学び・研究センター」に職員を増員し,博士号取得者5名の体制となった。2018年1月に科研費取扱規程に規定する研究機関の指定を受け,科研費への申請が可能となった。今後は,科研費等の外部資金を獲得し,希少動物の研究を一層推進し,その成果を,飼育動物の長寿命化や繁殖の成功率向上等の種の保存の取組,動物福祉の向上に生かしていくことが目的となる。研究体制を構築したことにより,京都市動物園は国内で有数の動物園研究機関になったと思われる。本稿では,京都市動物園における研究・教育体制,研究機関としての現状と課題について紹介する。

原著論文
  • 松原 和衛, 赤荻 周悟, 中牟田 祥子, 辻本 恒徳, 中牟田 信明
    原稿種別: その他
    2019 年 24 巻 3 号 p. 115-122
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/11/25
    ジャーナル フリー

     本研究では,ニホンジカの嗅覚器のGタンパク質の存在を明らかにするため,免疫組織化学的な検討を行った。その結果,嗅上皮の自由縁にはGαs /olf 抗体陽性反応, 鋤鼻感覚上皮の自由縁にはGαi -2抗体陽性反応が観察され,いずれの上皮自由縁にもGαo抗体陽性反応は観察されなかった。したがって,シカの嗅上皮には匂い受容体,鋤鼻器には1型鋤鼻受容体を発現した嗅覚受容細胞が分布していることを示唆する。これにより,ニホンジカの嗅覚器には多くの哺乳類と同様の受容体が発現しており,多くの哺乳類と類似した嗅覚構造を持つことが示唆された。

症例報告
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