日本野生動物医学会誌
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原著
イヌワシのミトコンドリアDNAにおける高多型的繰り返し配列
増田 隆一野呂 美幸梅原 千鶴子山崎 亨
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2002 年 7 巻 1 号 p. 75-80

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抄録
ミトコンドリアDNA(mtDNA)は一般的に種内変異および種間系統関係を分析する際の有用なマーカーとして知られている。この事実に加えて,私たちは,イヌワシmtDNAにおける49-50塩基(1ユニット)の繰り返し数が個体間で高多型的であること,さらに,この繰り返し配列部位が他のマーカーDNAとの併用により個体識別に有効となる可能性があることを明らかにした。この繰り返し配列はイヌワシmtDNAコントロール領域の3'側に位置し,そのユニット数とユニット内の塩基配列は個体間および個体内(ヘテロプラズミー)でも多型的であった。野生個体およびその繁殖個体のイヌワシ計21個体を分析したところ,ユニット内の2つの塩基サイトの多型性に基づいて,11種類のユニットが見出された。繁殖個体における2つの家系分析により,この繰り返し配列が次世代へ母系遺伝したことが示された。家族関係のないと思われるイヌワシ19個体から,16種類の繰り返し配列タイプを見出した。この繰り返し配列部位はmtDNAコントロール領域内の他の部位よりも速い進化速度を有していることが示唆された。
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© 2002 日本野生動物医学会
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