抄録
マレーバク(Tapirus indicus)の栄養管理に関する基礎的データを得るために,日本国内の動物園における4歳齢以上のマレーバク23頭の飼養状況を調査した。そのうち4頭を供試して消化試験を行い,成長ならびに体重の維持に要する可消化有機物摂取量(DOMI)を測定した。国内10ヶ所のマレーバク飼育施設における飼料給与量は,乾物量として2,302〜9,026g/日,粗蛋白質量は201〜1,433g/日の範囲であり,施設間で大きく異なっていた。また,飼料設計について炭水化物の給与形態は,カンショ主体のデンプン多給型からイネ科乾草主体の繊維多給型まで5種類に類型化できた。各栄養素の消化性について粗脂肪と総繊維(NDF)の消化率は低く(それぞれ25.7%および27.9%),個体間変動が非常に大きかった。反対に,糖・デンプン類(NFC)の消化率は85.5%と高く,個体間変動は小さかった。バクの体重変動を消化試験の結果と併せると,マレーバク成体の体重維持もしくは微増体となるDOMIは2,590〜3,208g/日であると結論した。