日本野生動物医学会誌
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原著
青森県に生息するニホンカモシカ(Capricornis crispus)の肺虫症
小山田 敏文河野 愛利子工藤 上吉川 博康吉川 堯
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2002 年 7 巻 2 号 p. 117-126

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抄録

青森県内で2000年4〜6月に自然死したニホンカモシカ5例の肺虫症を病理学的ならびに寄生虫学的に検討した。肺組織片から分離した寄生虫体は,宿主がニホンカモシカ,寄生部位が肺胞・細気管支であること,そして雄交接嚢(肋,交接刺,副交接刺)および一期幼虫の尾部の形態から,Protostrongylus shiozawaiと同定された。P.shiozawai寄生による肺の病変は後葉に好発し,肺胞管や細気管支周囲平滑筋の著しい肥大増生と気管支周囲リンパ装置の過形成が特徴的であった。これらの変化は,すでに報告されているP.shiozawai感染症の肺病変とおおむね一致していた。加えて,肺には肺水腫や肺胞壁の菲薄化・断裂を伴う空虚な肺胞(aqueous emphysema)が共通的に存在しており,死因として溺死が示唆された。

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© 2002 日本野生動物医学会
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