情報の科学と技術
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特集:地理空間情報と地理情報システム(GIS)
特集:「地理空間情報と地理情報システム(GIS)」の編集にあたって
當舍 夕希子
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2019 年 69 巻 6 号 p. 225

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抄録

2019年6月号の特集は「地理空間情報と地理情報システム(GIS)」です。地理空間情報とは,空間上の特定の地点・区域の位置を示す情報及び,それに関連付けられた情報のことであり,地理情報システム(Geographic Information Systems:GIS)は,この地理空間情報を電子的に処理する技術やシステムを指します。

地理空間情報の集合ともいえる「地図」は,我々の生きるこの世界を的確に表現することのできる,とても便利なツールです。従来,紙として存在した地図は,近年その姿をデジタルへと変え,いつでも好きな時に確認できる身近な存在として,自分の現在位置から目的地までの道順を確認するような日常動作から,統計や歴史資料,災害記録等の多様なデータの可視化まで,活躍の場を広げています。弊誌においても,2009年に刊行した59巻11号の特集「歴史地理情報システムの活用」では,地理情報の歴史的分析についてご紹介しました。

今号では,地理空間情報の収集・提供や,GISを使った様々なデータを“見せる”取り組みについて取り上げ,地理空間情報とGISの持つ可能性を考えたいと思います。

まず総論として,瀬戸寿一氏(東京大学空間情報科学研究センター)に,地理空間情報とGISについての基本的な知識と,日本における位置づけや発展について概説いただきました。続いて,ウェブ地図の提供事例として,国土地理院 地理空間情報部 情報普及課より,国土地理院が提供する「地理院地図」の機能と特徴,活用事例についてご紹介いただきました。地理空間情報の収集共有事例としては,飯田哲氏(一般社団法人オープンストリートマップ・ファウンデーション・ジャパン)から,誰もが参加可能なウェブ地図を作る取り組みであるOpenStreetMapをご紹介いただきました。また,実際にGISを用いたウェブサービスとして,羽渕達志氏(一般財団法人日本統計協会)及び駒形仁美氏(独立行政法人統計センター)から,政府統計の総合窓口e-Statの一部である「地図で見る統計(jSTAT MAP)」を,鈴木比奈子氏(国立研究開発法人防災科学技術研究所)から,過去1600年分の災害事例を地図上で可視化する「災害年表マップ」をご紹介いただきました。

今回ご紹介する事例は,いずれもインターネット環境さえあれば,誰でも容易に利用又は参加できる取り組みです。是非,お手元の端末からサービス画面をご覧いただき,実際に触ってみてください。内容や目的は多様ながら,いずれも地理空間情報とGISに関する興味深い取り組みであり,皆様とも何かしら関わりがあるのではないかと思います。本特集が皆様にとって地理空間情報やGISの活用への端緒となれば幸いです。

(会誌編集担当委員:當舍夕希子(主査),久松薫子,古橋英枝,光森奈美子)

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