情報の科学と技術
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特集:環境問題と情報
特集:「環境問題と情報」の編集にあたって
光森 奈美子
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2021 年 71 巻 2 号 p. 47

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抄録

2021年2月号は「環境問題と情報」と題してお届けします。

「環境問題」という言葉には,地球環境の汚染や悪化にまつわる様々な問題が含まれています。おそらく読者の皆様も,それぞれに思い起こすものが異なるのではないでしょうか。大気汚染,オゾン層の破壊,地球温暖化はずいぶん前から問題視されてきました。近年はプラスチックごみの問題,とりわけ海洋プラスチックに対する関心が高まり,多数の図書が発行されています。こうした環境問題への対応は,国や地方自治体,企業といった組織体だけでなく,私たち一人一人にも行動が求められます。

地球環境を保全し,持続可能な社会を構築していくためには,過去や現在の状況を知り,未来のリスクを予想し,何よりも行動することが必要です。そのために活用できる情報・データは,国内外の様々な組織において,収集や作成,公開されています。今回の特集では,特定の問題にはフォーカスせず,「環境問題」と呼ばれる問題を幅広く取り上げました。各種の問題に関してどのような情報やデータがあるのか,そうした情報やデータはどのように作られており,どのような課題を抱えているのかを知ることで,公開されている様々な情報・データの利活用が広がるものと考えます。

毎年のように起こる極端な気象現象を目の当たりにして,多くの方が気候変動について関心をお持ちだと思います。国立環境研究所 真砂佳史氏,服部拓也氏に,気候変動適応を進めるための情報基盤である「気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)」をご紹介いただきました。生物多様性は環境の変化を受けると同時に,環境の変化を知る手がかりとなります。こうした生物多様性に関する情報として,国立科学博物館 細矢剛氏に「地球規模生物多様性情報機構(GBIF)」をご紹介いただきました。ごみのリサイクルは私たちの日常生活の中にあり,身近な問題の一つです。ごみのリサイクル率の把握方法と今後の課題・展望に関して,国立環境研究所 河井紘輔氏にご執筆いただきました。持続可能な社会を構築していくため,環境保全に関する技術開発も進んでいます。九州大学 藤井秀道氏には,特許情報を活用した環境保全技術の評価についてご執筆いただきました。

遠いように感じる問題も,すべて私たちの生活に繋がっています。様々な「環境問題」に対して情報の視点から構成したこの特集が,読者の皆様の環境問題に対する理解を深め,より主体的に関わっていく契機となることを期待しています。

(会誌編集担当委員:光森奈美子(主査),大橋拓真,池田貴儀,中川紗央里)

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