2021 年 71 巻 6 号 p. 239
2021年6月号の特集は「X-インフォマティクス」です。
情報科学と生物科学を融合した情報生物科学がバイオインフォマティクスという言葉で広く知られるようになってきましたが,「バイオ」以外の「X-インフォマティクス」という言葉もよく耳にするようになってきました。蓄積された膨大なデータに情報学的アプローチを適用することで新しい発見を狙うX-インフォマティクスは,自然科学分野を中心に広がりを見せています。
本特集では,X-インフォマティクスの特徴や事例について5人の方々から解説をいただきました
総論では国立情報学研究所の北本朝展氏に,科学研究のパラダイムシフトにおいて第四パラダイムという概念から,X-インフォマティクスについて,自然科学,人文学,社会科学等の各分野の状況と今後の進展について解説していただきました。
京都大学の阿久津達也氏には,1990年に始まったヒトゲノム計画をきっかけにX-インフォマティクスの中で先行してきたバイオインフォマティクスについて,代表的な研究課題を紹介していただくとともに,国内における研究の歴史や発展について解説していただきました。物質・材料研究機構(NIMS)の出村雅彦氏には,データ駆動型の材料開発手法として最近注目されているマテリアルズ・インフォマティクスについて,NIMSで行っているデータ駆動研究とこれを支えるデータインフラについて解説していただきました。MI-6株式会社の入江満氏には,自然科学分野の代表的なX-インフォマティクスの比較及びX-インフォマティクスと計算科学や人工知能との関りについて解説していただきました。東京大学の加納信吾氏には,医療分野におけるテキスト情報によるデータを活用した分析事例として,助成金データベースを利用した先端医療技術のトレンド分析について解説していただきました。
近年の第三次AIブームも相まって自然科学分野でのデータ駆動型研究が活発化しています。人文学や社会科学の分野ではデジタル-Xやコンピュテーショナル-Xとも呼ばれ,今後データを活用した研究の発展が期待されています。本特集が情報やデータを扱うインフォプロの業務の参考になれば幸いです。
(会誌編集担当委員:炭山宜也(主査),野村紀匡,水野澄子,南山泰之)