情報の科学と技術
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特集:海外学術出版社の研究支援サービスの変化
特集:「海外学術出版社の研究支援サービスの変化」の編集にあたって
李 東真
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2021 年 71 巻 9 号 p. 385

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抄録

今月号の特集は,「海外学術出版社の研究支援サービスの変化」と題してお届けします。

約20年の間,学術コミュニケーションは大きな変革を遂げました。近年でも,研究成果のドラスティックなオープンアクセス(以下,OA)化を求めるPlan Sの発表とcOAlition Sの発足は,学術界,出版業界に大きな衝撃を与えました。また,COVID-19パンデミックにより,研究成果(論文,研究データ,ソースコードなど)のオープン化,迅速な情報共有を目的としたプレプリントサービス,厳密かつ透明性の高い査読(ピアレビュー)などへの関心が以前にも増して高まったといえるでしょう。

本特集では,学術コミュニケーションが絶え間なく発展する中で,学術出版社がそれらの動向をどのように捉え事業を展開してきたのかあるいは展開していくのか,当事者の視点からご解説いただきます。

総論として,増田豊氏(ユサコ株式会社)に,国際STM出版社協会の活動から学術出版社の近年の動向をご説明いただきます。各論では,大手出版社の方々にOA,アナリティクス事業の拡大,新たな研究出版ソリューション,プレプリントサービスの動向についてご解説いただきます。

Liz Ferguson氏およびBen Townsend氏(Wiley社)には,同社が新規OAジャーナルの創刊や既存ジャーナルのフルOA転換などを通じてOA出版へのニーズの高まりに対応してきたことをご紹介いただきつつ,コンソーシアムとの契約を事例に転換契約(Transformative Agreement)の仕組みやその影響力をご説明いただきます。

高橋昭治氏(Elsevier社)には,同社がアナリティクス事業に注力することになったきっかけをご紹介いただいた後,研究力分析ツールを含めた同社の製品・技術面での進展,研究評価者などへの利用者の拡大,今後期待される研究支援のDX(デジタルトランスフォーメーション)への貢献の展望についてご解説いただきます。

Taylor & Francis社傘下F1000 Research社のLiz Allen氏には,学術出版における最近の変化の要因とその影響,今後の動向をご考察いただいた後,研究・出版などに関わるステークホルダーの連携によって生まれる研究エコシステムおよびそのインパクトを最大化するF1000 Research社の研究出版ソリューションについてご説明いただきます。

最後に,野村紀匡氏(Digital Science社)に,文献調査および動向分析によって得られたプレプリントサービスのビジネスモデル,プレプリント投稿数の推移,プレプリントサービス運営における課題などを示していただきます。

読者のみなさまが,これからの学術コミュニケーションを展望するうえで,ご参考となれば幸いです。

(会誌編集担当委員:李東真(主査),南雲修司,野村紀匡,光森奈美子)

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