日本地すべり学会誌
Online ISSN : 1882-0034
Print ISSN : 1348-3986
ISSN-L : 1348-3986
総説
すべり面の構造とせん断強度研究の現状と課題
山崎 孝成
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 48 巻 3 号 p. 125-138

詳細
抄録

本総説ではすべり面の実態とそのせん断強度に関して既往の研究成果をまとめ, すべり面の実態に関しては以下の点について考察した。 (1) 再滑動型の地すべりについて, すべり面の母岩となった地質の違いによるすべり面およびすべり面を含むせん断帯の構造, (2) 2004年新潟県中越地震および2008年岩手・宮城内陸地震で発生した主な地すべりのすべり面およびせん断帯の構造, (3) 含スメクタイト系地すべりにおいて, スメクタイトがすべり面を被覆する機構, (4) すべり面に働く正負の間隙水圧発生機構, (5) すべり面に揚圧力を与える水圧伝達機構。
 すべり面のせん断強度については以下の点を考察した。 (1) 残留強度に与える粘土鉱物の影響, (2) 残留強度計測に使用されるリングせん断試験とすべり面をせん断面とする繰り返し一面せん断試験の特徴, (3) 多くの計測事例によるすべり面せん断強度計測結果のまとめ, (4) 地震時の高速地すべり発生機構, (5) せん断強度の速度依存性。
 今後の課題としては, (1) 変成岩および中古生層分布域のすべり面の詳細構造, (2) すべり面をせん断面とする動的試験などの新しい試験手法の開発, (3) せん断強度の温度依存性による積雪地域の地すべり機構, などの解明に向けた研究を提案した。

著者関連情報
© 2011 公益社団法人 日本地すべり学会
次の記事
feedback
Top