日本地すべり学会誌
Online ISSN : 1882-0034
Print ISSN : 1348-3986
ISSN-L : 1348-3986
研究ノート
重力変形斜面の岩盤に発達する亀裂が溶出特性に与える影響
田中 健貴木下 篤彦吉村 元吾菅原 明小川内 良人横山 修
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 56 巻 1 号 p. 1-7

詳細
抄録

 近年, 深層崩壊が発生するおそれのある斜面の抽出方法の1つとして水質分析を用いる方法が提案されている。この方法では, 地下水の集中を深層崩壊の1つの要因と捉え, 地下水が集中する箇所で湧水が見られることに着目し, 渓流水の水質分析を行う。しかし, 渓流水の水質形成に影響を与えると考えられる斜面からの湧水の水質が, 深層崩壊が発生するおそれのある斜面周辺で変化するメカニズムについては不明な点が多い。そこで本報告では, 深層崩壊が発生するおそれのある斜面で複数のボーリングコアを用いて溶出試験を行い, 溶出特性の違いを分析した。その結果, コアの破砕度や開口量によって溶出イオンの濃度が変化すること, おおむね開口量が3mm程度で溶出イオン濃度が大きくなる傾向を示した。これらのことから, 岩盤の溶出過程は一様ではなく, 岩盤に発達する亀裂や破砕状況に影響されている可能性が示された。

著者関連情報
© 2019 公益社団法人 日本地すべり学会
次の記事
feedback
Top