抄録
1996年12月6日, 長野県小谷村の蒲原沢上流で発生した山腹崩壊の土砂が土石流化して流下した。そのため, 下流域で前年度の災害復旧工事に従事していた人々が被災し, 多数の死者をだした。同じ時刻ころに約5.7km南南東に設置していた地震計に震動波形が記録されていた。本論文ではその波形を種々の面から検討した結果, 崩壊土砂が渓流を流下する際に生じた地盤の震動と推定した。今回の地盤震動は地震エネルギーに換算するとマグニチュードM0.05に匹敵する値である。さらにFFT解析により震動記録の立ち上がり前から減少するまでのパワースペクトルの変化を時系列的に検討した。その卓越周波数は1~2Hz付近に見られ, 過去に観測された土石流による震動に比べて低周波数であることがわかった。また, 既往の崩壊事例調査から崩壊土量とその流下が引き起こす振動エネルギー (マグニチュードM) の間には一定の比例関係が存在し, 今回の土石流もその関係式上にほぼ位置する事を示した。