2006 年 14 巻 2 号 p. 15-27
本稿の目的は,日本企業を対象として,販売費および一般管理費のコスト・ビヘイビアを調査することにある.具体的には,日本企業においてコスト・ビヘイビアの非対称性,すなわちアクティビティの水準が大きくなったときのコストの増加額が,アクティビティの水準が小さくなったときのコストの減少額よりも大きいことが観察されるかどうかを検証する.検証の結果,コスト・ビヘイビアが非対称的であることが確認されたが,アメリカ企業を対象としたAnderson et al.(2003)の結果と比べると,日本企業においては,コスト・ビヘイビアの非対称性はより長期にわたって観察されることが明らかになった.本稿ではまた,アクティビティの変化の大きさとキャパシティの利用度が,コスト・ビヘイビアの非対称性にどのような影響を与えているかを検証することにより,コスト・ビヘイビアが非対称的になる原因について考察している.