管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌
Online ISSN : 2434-0529
Print ISSN : 0918-7863
14 巻, 2 号
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論文
  • 高見 茂雄
    2006 年14 巻2 号 p. 3-13
    発行日: 2006/03/31
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    日本企業は設備投資額を減価償却費の範囲内に抑えようとする傾向にある.それは財務制約下にある企業で顕著である.それでは財務内容が改善すればどの程度企業は積極的な設備投資行動に転じる傾向があるのか.これが本論文の問題提起である.本研究は日本製造業897社11年度のデータを用い,財務内容の状態によって設備投資行動に違いが見られるか,さらに財務内容の変化のパターンによって設備投資行動に違いが見られるかについて実証分析を行った.その結果財務内容が悪い状態にあるとき企業は特に設備投資を抑える傾向が強く,財務内容が改善した場合積極的設備投資行動に出る傾向にあることが示された.そして同じ改善度合いでも財務内容が悪い状態から脱却した場合の方が他の場合よりその傾向は顕著にみられた.

  • 平井 裕久, 椎葉 淳
    2006 年14 巻2 号 p. 15-27
    発行日: 2006/03/31
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は,日本企業を対象として,販売費および一般管理費のコスト・ビヘイビアを調査することにある.具体的には,日本企業においてコスト・ビヘイビアの非対称性,すなわちアクティビティの水準が大きくなったときのコストの増加額が,アクティビティの水準が小さくなったときのコストの減少額よりも大きいことが観察されるかどうかを検証する.検証の結果,コスト・ビヘイビアが非対称的であることが確認されたが,アメリカ企業を対象としたAnderson et al.(2003)の結果と比べると,日本企業においては,コスト・ビヘイビアの非対称性はより長期にわたって観察されることが明らかになった.本稿ではまた,アクティビティの変化の大きさとキャパシティの利用度が,コスト・ビヘイビアの非対称性にどのような影響を与えているかを検証することにより,コスト・ビヘイビアが非対称的になる原因について考察している.

論壇
  • 伊藤 克容
    2006 年14 巻2 号 p. 29-40
    発行日: 2006/03/31
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本稿では、経営戦略との関係を重視した管理会計研究を対象とし、経営戦略論の成果が管理会計研究に対してどのような知見を追加する可能性があるのかを考察する。現在及び将来の戦略的管理会計論研究にとってきわめて重要だと考えられるのは、経営戦略論の研究が進展するのにともない、経営戦略論自体が多様化していることである。言い換えれば、経営戦略と管理会計の関係性は、従来想定していたほど単純ではなくなっている。「戦略実行のマネジメント・システム」としての管理会計が視野に入れるべき経営戦略の内容自体が変化したことによって、管理会計研究がどのような方向性に拡張される可能性があるかを以下の2つの問題領域に絞って検討する。ここで取り上げる2つの問題領域とは、伝統的な管理会計ツールである予算管理システムと資本予算(設備投資の経済性計算)についてである。どのような経営戦略論を前提とするかによって、管理会計論システムのデザインと運用が異なる可能性があることを指摘する。

  • 南雲 岳彦
    2006 年14 巻2 号 p. 41-53
    発行日: 2006/03/31
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    1992年に誕生して以来,バランスト・スコアカード(BSC)は,シックスシグマによる品質改善プログラムとの連動やEVAを活用したバリューベースト・マネジメントとの融合等,他手法と有機的に結合することによりイノベーティブなモデルを創出してきた.本稿は,そのようなBSC手法の発展の流れの中で,これまで必ずしも明示的に論じられることのなかったBSCとリスク管理との関係について整理し,両者の効率的な統合手法としてBSCとエンタープライズ・リスク管理の先端的なフレームワークであるCOSOエンタープライズ・リスク・マネジメント(ERM)との統合可能性を考察する.

  • 林 昌芳
    2006 年14 巻2 号 p. 55-64
    発行日: 2006/03/31
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    わが国では,今日戦略実行としてのBSCの導入が徐々に進められている.このような中で,2002年よりシャープグループでも戦略実行の取り込みを行った.シャープグループは,構造改革を促すため事業構造の変革,オペレーションの変革,経営管理システムの変革という3つの改革を開始した.本稿では,シャープグループの変革として,BSCの導入と戦略目標管理システムとの連携について明らかにした.特に,カスケードと変革志向の組織を構築するITツールの開発について明らかにした。カスケードについては,戦略的目標管理システム(BSC-P:バランスト・スコアカード・パーソナル)を構築した.また,一般管理職の理解促進のためにeラーニングシステムを構築した.

  • 伊藤 嘉博
    2006 年14 巻2 号 p. 65-76
    発行日: 2006/03/31
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    バランスト・スコアカード(balanced scorecard;BSC)およびその支援ツールである戦略マップは,今日では営利企業のみならず,パブリックセクターや非営利組織にまで浸透しつつある.さらに,組織の持続可能な成長を追求するために,CSR(corporate social responsibility)に関連する戦略目標をBSCや戦略マップのなか盛り込もうとする動きもある.しかしながら,これらの戦略目標を,株主価値の向上をターゲットとする他の戦略目標とのロジカルな関連性を保ちながら,BSCあるいは戦略マップ上に描き込むことは困難である.というのも,前者はしばしば後者に対して,リスクないし制約要因として機能するからである.本稿では,戦略目標間の因果連鎖およびトレードオフを識別・分析するためのアプローチとして3次元戦略マップを提案する.各種の戦略目標はこれまでほぼ同質のものとして検討されてきたが,このアプローチに従うならば,それらのなかでどれが組織的なミッションを実現するうえでの重要成功要因であり,またどれがリスク・制約要因となるかを明らかにすることができるであろう.

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