2006 年 14 巻 2 号 p. 3-13
日本企業は設備投資額を減価償却費の範囲内に抑えようとする傾向にある.それは財務制約下にある企業で顕著である.それでは財務内容が改善すればどの程度企業は積極的な設備投資行動に転じる傾向があるのか.これが本論文の問題提起である.本研究は日本製造業897社11年度のデータを用い,財務内容の状態によって設備投資行動に違いが見られるか,さらに財務内容の変化のパターンによって設備投資行動に違いが見られるかについて実証分析を行った.その結果財務内容が悪い状態にあるとき企業は特に設備投資を抑える傾向が強く,財務内容が改善した場合積極的設備投資行動に出る傾向にあることが示された.そして同じ改善度合いでも財務内容が悪い状態から脱却した場合の方が他の場合よりその傾向は顕著にみられた.