2010 年 18 巻 1 号 p. 19-31
会計利益は企業の業績指標として代表的であるが,経営者の裁量が介入しやすいことが指摘されている.一方で,課税所得は会計利益と比べ経営者の裁量が介入しにくく硬度が高いと考えられている.本稿は,実績値としての課税所得データを用い,1998年の税制改正に焦点を合わせて,課税所得と会計利益の情報内容の有用性について比較分析を行った.分析の結果,税制改正以降,課税所得の相対的・増分的情報内容の有用性が高くなっていること,会計利益と課税所得の関連性が相対的に弱いと予想されるサンプルの場合の課税所得情報の有用性が高まること,および会計利益の質が低い企業の課税所得の相対的情報内容は高まり,増分的な情報内容も豊富になること等が明らかになる.これらの結果は,税制改正後に課税所得情報の有用性が高まっていることを示している.