管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌
Online ISSN : 2434-0529
Print ISSN : 0918-7863
18 巻, 1 号
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論文
  • 安酸 建二
    2010 年18 巻1 号 p. 3-17
    発行日: 2010/01/10
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    コストの変動に関連する近年の実証研究において,売上高が減少する場合のコストの減少率の絶対値は,売上高が増大する場合のコストの増加率の絶対値よりも小さいという現象が広く観察され,この現象は,コストの下方硬直性と呼ばれている.コストの下方硬直性は,将来的に売上高が回復すると予測する経営者が,経営資源を温存するため意図的にコストを負担することから生じる現象であると考えられている.本研究では,コスト変動に影響を与える要因としての売上高予測,その下でのコスト変動,利益の関係について想定される仮説の検証を行う.具体的には,予測が実績を上回るという意味での楽観的な売上高予測が行われた場合に,将来的な売上高の増加から十分な利益を獲得できないことを検証する.この作業を通じて,コスト変動を通じて利益に影響を与える要因としての売上高予測の重要性に関する実証的証拠の提示を行う.

  • 大沼 宏, 鈴木 健嗣, 山下 裕企
    2010 年18 巻1 号 p. 19-31
    発行日: 2010/01/10
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    会計利益は企業の業績指標として代表的であるが,経営者の裁量が介入しやすいことが指摘されている.一方で,課税所得は会計利益と比べ経営者の裁量が介入しにくく硬度が高いと考えられている.本稿は,実績値としての課税所得データを用い,1998年の税制改正に焦点を合わせて,課税所得と会計利益の情報内容の有用性について比較分析を行った.分析の結果,税制改正以降,課税所得の相対的・増分的情報内容の有用性が高くなっていること,会計利益と課税所得の関連性が相対的に弱いと予想されるサンプルの場合の課税所得情報の有用性が高まること,および会計利益の質が低い企業の課税所得の相対的情報内容は高まり,増分的な情報内容も豊富になること等が明らかになる.これらの結果は,税制改正後に課税所得情報の有用性が高まっていることを示している.

  • 山田 方敏, 蜂谷 豊彦
    2010 年18 巻1 号 p. 33-48
    発行日: 2010/01/10
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    これまで,M&Aが企業パフォーマンスに与える影響については,株式パフォーマンスを中心に検証が行われており,財務業績への影響については規模や業種など静的な視点からの分析しか行われていない.本稿は,主に多角化企業の評価に用いられてきた内部資本市場の効率性に焦点を当て,これまでブラックボックスであったM&Aが財務業績に与える影響を動的な視点から解明する.

    M&Aの実施による内部資本市場の効率性と財務業績の変化を分析した結果,M&Aを行うことにより,内部資本市場の効率が低下するほど財務業績も低下することが明らかになった.また,M&Aによって多角化度合が増加するほど内部資本市場の効率が低下すること,M&Aを実施する前の内部資本市場の効率が高いほど実施後に効率が低下することがわかった.さらに,M&Aの実施により,事業の多角化度合が高まり,内部資本市場の効率は低下し,財務業績が悪化することもわかった.

  • 新井 康平, 加登 豊, 坂口 順也, 田中 政旭
    2010 年18 巻1 号 p. 49-69
    発行日: 2010/01/10
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本論文の目的は,工場や事業所の製品原価計算について,その実態を明らかにすることである.管理会計教育における製品原価計算の割合は依然として大きいにもかかわらず,近年,この領域が研究者によって研究されることは少なくなってしまった.そこで本論文は,規範的な議論ではなく,実証的かつ経験的な方法によって製品原価計算の利用目的と設計原理を探求する.探索的因子分析の結果,製品原価計算の5つの利用目的が明らかとなった.また,これらの利用目的と技術変数などが,製品原価の範囲,総合/個別原価計算の選択,原価情報の報告相手,といった設計要素に影響を与えることが明らかとなった.

  • 浅田 拓史
    2010 年18 巻1 号 p. 71-86
    発行日: 2010/01/10
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本稿は,個別企業における管理会計の変化プロセスについてより良い理解を提供することを目的としている.このために本稿では進化的アプローチを採用し,株式会社村田製作所の事例を用いて,その優位性を経験的に検証する.また,歴史研究において蓄積されてきた豊かな知見を利用し,これを拡張するという方法でより説明力の高い分析枠組みを構築しようと試みる.このような新たな分析枠組みを用いることで,村田製作所のマトリックス経営における管理会計技法の機能のみの変化という新たな進化型や,経路依存性などの組織的な変化の性質について考察することが可能となる.最後に,進化的アプローチの有用性を主張するとともに,将来研究へ向けたいくつかの課題を述べる.

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