1993 年 2 巻 1 号 p. 25-45
今日企業は,急激な環境の変化の中で,長期にわたって存続・成長していくために,事業の再構築を余儀なくされている.本研究では,新規事業進出問題に焦点を絞り,意思決定モデルを構築し,そのモデルを意思決定支援システム(DSS)としてコンピュータ情報システム化することを目的とする.
モデルは,①環境条件の定性的要因の条件判断,②会計的投資収益率法と回収期間法による投資評価,③資金調達決定,および④財務的総合評価の4つの部分決定モデルの連結として構築されている.これらの部分決定モデルにそれぞれ環境変数・政策変数を入力し,逐次的に解いていくことによって,新規事業進出問題の解答を得ることができる.
DSSのプログラムは,7つのサブシステムから成る.管理者は,メニュー画面からサブシステムの番号を選んで順次実行させると,意思決定の支援が得られるであろう.また,種々の環境下でシステムのフレキシビリティーを確保するために,定性的要因の判断と資金調達とにデシジョンテーブルを用いた.デシジョンテーブルは,企業によって異なる条件に応じて変更したり,加えたり,削除することが容易である.つまり,デシジョンテーブルは,エキスパートシステムにおけるエキスパートの知識ベースとなっている.
最後に,このDSSの有効性を検証するために,3つのケースの試行を行った.