管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌
Online ISSN : 2434-0529
Print ISSN : 0918-7863
2 巻, 1 号
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論文
  • 枇々木 規雄, 福川 忠昭
    1993 年2 巻1 号 p. 3-23
    発行日: 1993/07/25
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    自由金利による調達の増加やBIS(国際決済銀行)による自己資本比率規制などの金融の自由化・国際化の影響は日本の銀行の経営環境を大きく変えようとしている.そのため,金利変動リスクなどの財務リスクは増大し,そのリスク管理がますます重要になってきている.本論文では銀行のリスク管理手法であるALM(資産負債管理)の考え方を用いた数理計画モデル(目標計画法によるモデル)を扱った枇々木・福川の目標計画モデルを多期間モデルへ拡張したALMモデルを提案する.多期間モデルは,従来のモデルがトレード・オフの関係にあるリスクと利益を関連させたリスク管理のモデル化である特徴に加えて,将来に渡って計画的に資産や負債をコントロールできるような情報を得ることができるのでリスクを管理する際の経営計画の作成に役立たせることができるという特徴を持っている.モデルを解く方法論としては,リスクと利益という多目標を取り扱うことができる目標計画法を用いる.そして,モデルの特徴や定式化を通してモデルの有用性を明らかにしていく.

  • 門田 安弘, 星 法子
    1993 年2 巻1 号 p. 25-45
    発行日: 1993/07/25
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    今日企業は,急激な環境の変化の中で,長期にわたって存続・成長していくために,事業の再構築を余儀なくされている.本研究では,新規事業進出問題に焦点を絞り,意思決定モデルを構築し,そのモデルを意思決定支援システム(DSS)としてコンピュータ情報システム化することを目的とする.

    モデルは,①環境条件の定性的要因の条件判断,②会計的投資収益率法と回収期間法による投資評価,③資金調達決定,および④財務的総合評価の4つの部分決定モデルの連結として構築されている.これらの部分決定モデルにそれぞれ環境変数・政策変数を入力し,逐次的に解いていくことによって,新規事業進出問題の解答を得ることができる.

    DSSのプログラムは,7つのサブシステムから成る.管理者は,メニュー画面からサブシステムの番号を選んで順次実行させると,意思決定の支援が得られるであろう.また,種々の環境下でシステムのフレキシビリティーを確保するために,定性的要因の判断と資金調達とにデシジョンテーブルを用いた.デシジョンテーブルは,企業によって異なる条件に応じて変更したり,加えたり,削除することが容易である.つまり,デシジョンテーブルは,エキスパートシステムにおけるエキスパートの知識ベースとなっている.

    最後に,このDSSの有効性を検証するために,3つのケースの試行を行った.

  • 伏見 多美雄, 野々村 智範
    1993 年2 巻1 号 p. 47-70
    発行日: 1993/07/25
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    設備投資計画の経済性分析の方法論として,キャッシュフロー基準の経済性指標を,条件に応じて使い分けるやり方が広く用いられているが,現実には,投資の結果として生じる稼得収益には不確実性がつきまとうために,十分な感度分析を行い,その分析結果を分かりやすくグラフで表現する方法が奨励されている.

    しかし,従来開発され実用化されている分析法は,毎期のキャッシュフローが均等な場合や,年々一定の上昇率ないし逓減率を仮定できる場合を前提としているので,たとえば新製品の商品化計画とか,新規事業への参入計画といった戦略的な投資計画には適用が困難である.というのは,戦略的投資計画では導入期・成長期から成熟期に達し,やがて安定期ないし衰退期に入るというように,不均等な稼得収益を前提とせざるをえないからである.

    本稿は,そのような不均等な稼得収益をもつ設備投資計画に焦点を当て,これを効果的にサポートする感度分析とその図式表現について研究したものである.

    第1節では,本稿で対象とする感度分析のねらいを整理したのち,予備的考察として,販売量が年々均等な場合の代表的な感度分析グラフの例を示す.そして,販売量や売上高の流列が不均等な場合の問題点を指摘する.第2節では,販売量(または需要量や売上収益)の年価という代用変数の導入を提案し,分析のベースとして「流列のパターン」および「リスクのタイプ」というコンセプトを用いた定量化の方法を述べる.

    第3節では,こうして求められる販売量の年価と投資案の正味年価との関係に注意を向ける.そして運転資本投資や設備の処分損と税金を考える場合も,ほぼ線形の関係を想定することができるが,経験曲線を考慮する場合は帯状の幅を持った関係として捉えざるを得ないことを論じる.第4節では,モデル企業による具体的な数値例を用いて,優劣分岐線グラフの活用例などを示す.

研究ノート
  • 枇々木 規雄, 福川 忠昭
    1993 年2 巻1 号 p. 71-89
    発行日: 1993/07/25
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究ノートでは,銀行のリスク管理手法であるALM(資産負債管理)の考え方を用いた枇々木・福川の多期間ALMモデルの数値実験による考察を行う.数値実験の目的は,モデルの特徴である(a)リスクと利益のトレード・オフの関係,(b)将来に渡る資産や負債の計画的なコントロール,などがうまく表現できるモデルかどうかを具体的に明らかにするためである.そのために,(1)管理期間(計画期間,基準期間)が異なるケースの比較,(2)金利変動リスクと利益に対する目標値が異なるケースの比較,(3)自己資本比率と預金準備率に対する制約値が異なるケースの比較,(4)市場金利についての予想が異なるケースの比較,の4つの数値実験を行う.数値実験に用いるデータは,ある都市銀行の有価証券報告書データを一般的に言われている状況,例えば短期調達・長期運用の構造を持つなどを考慮して加工したデータを用いている.そして,それらに対する考察を通じてモデルの有用性を明らかにしていく.

  • 三田 洋幸
    1993 年2 巻1 号 p. 91-124
    発行日: 1993/07/25
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    市場の成熟化と多様化とが並存している今日の経営環境においては,市場に精通していることの重要性が益々高まりつつある.成熟化した市場において収益性を高めようとするならば,費用対効果を注意深く見計らったうえで経営資源を配置することが重要であり,それには市場状況に精通していることが不可欠となるためである.そこで本研究では,市場に最も近いところで活動している営業部隊を巧く活用することの重要性に着目し,市場状況への対応力を高めることを指向したセールス・マネジメント・システムのモデル化を行う.そのようなモデル化を行うときの一つのアプローチとして,市場情報を有効に活用するための仕組みをセールス・マネジメントの中に組み込むことを狙いとするものである.

    まず第1節では,市場への対応力という観点から,今日の代表的なセールス・マネジメント・システムの抱える問題点を明らかにし,改善の方向性を検討する.第2節では,営業戦略の策定プロセスを精緻に体系化することによって,市場状況が組織の上層部に行き届き,現場のコミットメントと全社的な資源配分方針との調和のとれた営業戦略を策定できることを提示する.第3節では,このようなセールス・マネジメント・システムを実務的に運用するにあたって,情報処理の負担を軽減するためにEDPシステムの概要を設計する.第4節では,結論および本稿において構築したセールス・マネジメントを導入していくうえで未解決の課題を述べる.

特集
  • 松田 修一
    1993 年2 巻1 号 p. 125-148
    発行日: 1993/07/25
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    1985年のプラザ合意以降の急激な円高誘導以降,さらにわが国人口構造の高齢化進行が相俟って,各企業のグローバル戦略の重要性が強調されるようになってきた.しかし,昨今の新聞報道にみる通り,企業の特に欧米先進国への現地化の多くは,苦戦を強いられているのが現状である.

    本論文では,次の3点に関して検討している.

    1.米国に進出したわが国子会社の経営実態の調査をもとに,各種経営問題を明らかにしている.過去5年間売上高の年率10%前後の成長と従業員の雇用の創出には,大変な貢献をしてきたが,利益は悪化傾向にあり,配当は期待できない.

    2.1990年当時,わが国企業,特に製造業は史上空前の好決算にもかかわらず,先進諸国での子会社経営がなぜ軌道に乗らないのかを明確にする.いわゆる日本型経営の特性とここから発生する日本企業の収益構造と資金構造が,欧米先進国には移転が困難であるのが原因である.

    3.このような状況下で,日本企業はグローバル企業として耐えうる経営体質に変革する必要がある.管理システムの前提としての基本行動,さらに基本的管理思考を変革する必要がある.とくに,経営管理の基本となる経営目標の変革,親子会社間の取引の変革が不可欠である.

  • 大川 邦彦
    1993 年2 巻1 号 p. 149-159
    発行日: 1993/07/25
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    表題は「海外進出企業の現在直面する税務上の問題」とし,目次は「1はじめに」「2グローバル企業と税務」「3国際的移転価格の問題と日本のグローバル企業を取り巻く環境」「4日本のグローバル企業は移転価格の問題にどのように対処すべきか」としてまとめた.

    経済,貿易摩擦が続く米国その他の外国に進出した日本系企業に関する税務上の主要な規制等を一覧し,その中で海外の事業の生き残りを左右するほどの重要性を持つ国際間の移転価格の基本的な算定方法の背景にある考え方とその問題点を検討し,最後に現在および将来に向け企業は移転価格の問題にどのように対処すべきかを論ずる.

  • 芝 章
    1993 年2 巻1 号 p. 161-179
    発行日: 1993/07/25
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    1.海外企業進出において管理会計の課題は何かを実践的に考える場合次のステップが必要である.

    ①海外企業進出の課題を明らかにする

    ②管理会計の機能と特色を再認識する

    ③ ①と②より海外企業進出における管理会計の具体的課題をクローズアップする

    2.海外企業進出における管理会計の具体的課題は次のとおりである.

    ①海外関係会社の組織上の位置付けと本社の立場からの管理体制

    ②海外関係会社の業績計算

    ③海外関係会社の業績評価

    ④海外関係会社から本社へのレポーティングシステム

    ⑤リスクへの対応(為替リスク,税金リスク)特に詳細説明を要するのは①,②及び③である.

    3.海外関係会社の組織上の位置付けと本社の立場からの管理体制

    ①組織上の位置付けとしてはおおむね5つのパターンがある

    ②海外関係会社ごとに主管担当役員と主管部を決めるのが有効である

    4.海外関係会社の業績計算と業績評価

    ①業績計算は業績評価のために必要であるが両者は同じものではない

    ②業績には単独業績と連結業績がある

    ③業績評価は多元的構造を持っており,評価対象と評価のフェーズをマトリックス構造で理解する必要がある

    ④定型化しなければならないのは予算統制の締めくくりとして行なわれる予算対比による評価であり,これは人事考課と報奨につながる

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