本論壇の目的は,筆者の「前向き」の実証研究にまつわる諸経験を紹介しながら,産学連携とアクションリサーチの意義や面白さ・大変さを読者と共有することにある.筆者の諸経験からすると,(i)実務家の方々に「ありがとう」と言っていただける,(ii)いい人材が育つ,(iii)信頼できる記録を後世に残すことができる,という3点を同時追求できることが,産学連携によるアクションリサーチならではの意義であると思われる.しかし一方で,産学連携によるアクションリサーチは,研究者個人で全てを行うにはコストがかかりリスクも大きいことを忘れてはならない.筆者が「管理会計における産学連携とアクションリサーチ」との関連で今後の日本管理会計学会に期待したいのは,研究者個人が全てのコストとリスクを負わなくてすむ体制を創ること,学術論文が蓄積・発信される仕組みと仕掛けを創ること,の2点にある.