本研究の目的は,主観的業績評価の純効用が高まる状況を解明することである.具体的には,主観的業績評価の純効用を規定する要因として,環境不確実性と業績指標の多様性に着目する.また,主観的業績評価の純効用を測る尺度として組織業績を選定する.そのうえで,主観的業績評価が組織業績におよぼす影響に対する環境不確実性と業績指標の多様性の調整効果を検証することで,主観的業績評価の純効用が高まる状況を解明する.実証分析の結果,主観的業績評価は,環境不確実性が高く,業績指標の多様性が低い状況で組織業績(財務業績,市場業績)を高めることが明らかになった.この結果は,特定の状況において,主観的業績評価と業績指標の多様性が,補完的というよりも代替的に機能することを示している.また,本研究の分析結果は,主観的業績評価と業績指標の多様性は,目標整合性の向上やリスクの低減をもたらす点で役割が重複するものの,競争環境の不確実性によって,適合的なアプローチが異なることを示している.