2021 年 29 巻 1 号 p. 71-90
本研究の目的は,「予算達成に向けてコントロールを行うのは組織間で共通するにも拘らず,その効果に差が生じるのはなぜか」という問いにひとつの説明を与えることにある.本研究の特色は,予算達成に向けたコントロール(診断的コントロール)の質に着目し概念化したうえで,その影響プロセスを詳細に検討した点にある.実証的分析の結果,行動選択の支援を強調する質の高い診断的利用は,質の高い意思決定プロセスの確立を通じ優れた効果(利益目標志向的な組織統合,環境適応)をもたらすのに対し,努力や服従を強いる質の低い診断的利用は,意思決定プロセスで様々な問題行動を引き起こすことが示された.こうした結果は,診断的コントロールの行使自体ではなく,その行い方の優劣という質的側面に着目することで,効果の多様性を説明できることを示している.加えて,予算達成に向けた質の高い意思決定プロセスの確立が欠かせないことを示している.