この論文の目的は,株主(プリンシパル)と経営者(エイジェント)の関係を探るプリンシパル・エイジェントモデルにもとづき,企業のコーポレート・ガバナンスにおける報酬契約の設計の重要性を指摘し,自己申告にもとづく報酬システムの新しいアプローチを提案することである.業績指標の精度を統制環境と統制能力および統制活動の積とモデル化し,エイジェントの統制能力の自己申告値に応じて精度が適切な水準に自動調整される仕組みを内包した報酬契約を設計することで,プリンシパルの期待効用を最大化できること示す.さらに,エイジェントの自己申告値が比較的低水準の場合,プリンシパルは,自己申告を前提とする報酬契約からこれを前提としない報酬契約への修正を検討し,その可能性をエイジェントに事前に宣言することで,期待効用をさらに最大化できることを示す.このアプローチにより,内部統制と報酬システムの連携が企業ガバナンスの成果向上に貢献することが示唆される.