将来,確実に支出をもたらす租税は,企業が設備投資案を評価する際に考慮すべき重要なファクターの一つである.特に,法人税,道府県民税の法人税割,市町村民税の法人税割および事業税からなる法人所得税は,法人の所得に対して変動し,かつその所得に対して占める割合が大きいので無視できない要素であろう.それゆえ,設備投資による法人所得税の実質的な負担額を計算するための実効税率は重要な概念であるといえる.設備投資案を評価する際には資金の時間的価値を考慮しなければならないので,法人所得税の支払時期や事業税の損金算入時期が重要となるが,これまでの実効税率の考え方では,中間申告制度を十分に考慮していないため,それらの時期が現実とは異なって扱われていた.そこで本研究では,仮決算方式により中間申告を行う場合について,中間申告および支払時期を考慮した実効税率の計算方法を提案するとともに,提案する方法と従来の方法との比較・検討を行う.これにより,設備投資案評価のための実効税率の大きさは,資本コスト率や法人所得税の各税率の他に対象となる期の事業税控除前課税所得の増分のうち上半期の占める割合にも影響を受けることがわかる.また資本コスト率が大きい程,あるいは上半期と下半期で事業税控除前課税所得の増分の差が大きい程,従来の方法は現実とは異なった税負担を示すことがわかる.