2022 年 20 巻 p. 23-38
本論は戦後初期における小出浩平の音楽美による人格陶冶論を、戦前期との連続性と「自律的な音楽」に着目して明らかにすることを主題としている。戦後初期の小出の音楽教育論は戦前期との連続性が顕著に見られた。その基因には「自律的な音楽」の存在があった。それほど「自律的な音楽」の影響は多大であり、戦前戦後期において一貫して小出の音楽教育論の理念と実践の基底をなしていた。小出が「自律的な音楽」に固執したのは、明治期以来続く功利的で政治的な手段として小学校音楽が位置づけられたことへの不満と憤りであり、小学校音楽の存在意義を転換するために、子どもを音楽美の世界と融合させることを目的とした音楽教育論を主張した。その目的を達成するために、小出は音楽を構成するリズム、メロディー、ハーモニーの三要素、音楽形式や構造を確実に理解・感得できるための音楽知識・技能の習得を重視する基礎指導を徹底した。