2022 年 20 巻 p. 83-92
1933年生まれの小林道夫は、バロック音楽、特にJ.S.バッハ作品に造詣が深く、ピアニスト、チェンバロ奏者、指揮者として現在も活躍している演奏家である。一方、小林は、日本の伴奏ピアニストの草分けとしても知られている。本論では、小林の伴奏分野における我が国の洋楽壇への貢献を歴史的に説明した研究文献がないことから、小林が大学在学中から1965 年に留学するまでの活動実態に焦点を当て、その功績を明らかにする。資料やインタビューからは以下の3点が明らかになった。1)小林は、大学在学中より多くの歌手と共演を重ねた。中でも中山悌一との協演が小林の演奏水準を向上させ、演奏様式そのものを発展させる機会となった。2)小林は日本フーゴー・ヴォルフ協会の役員を務め、例会(演奏会)で連続的に伴奏し、日本でのヴォルフの普及とドイツ・リート全体の深い理解と浸透を掲げた協会の運営に積極的に携わった。3)伴奏への関心・認識がまだ低かった時代に、演奏活動を続けながら折に触れ音楽観・伴奏観を述べ、ドイツ・リートの伴奏に関する先進的考えを示唆し、我が国の洋楽壇を既に留学前から牽引した。