抄録
ウィリアム・バードは、当時のマドリガルの急激な流行にあやかって自身の作曲したコンソート・ソングを多声の声楽作品に手直しして出版し、意図通りに成功を収めた。本稿では、バードがコンソート・ソングから多声声楽作品へどのように改作していたのかについて、コンソート・ソングの器楽パートへの歌詞の付け方を中心に調べて考察した。バードは、もとの器楽パートに歌詞を付けるにあたって、歌詞の繰り返しや複数音に1音節を割り当てるメリスマを多用している。そのうち、歌詞の繰り返しは、もとのコンソート・ソングの対位法を際立たせる効果がみられた。また、メリスマについては、特に機能語や内容語の弱音節に多く用いることによって、歌詞よりもハーモニーを聴かせる効果が得られていた。これらから、バードが、対位法とハーモニーを重視して作ったコンソート・ソングの特徴が活かされるように工夫して歌詞を付けていたことが明らかになった。