音楽表現学
Online ISSN : 2435-1067
Print ISSN : 1348-9038
研究報告
ハンス・ライグラフの演奏解釈とその哲学的探究の視点
異なる資料のF. シューベルト《楽興の時》第6番をめぐる解説の比較に基づいて
田舎片 麻未
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2024 年 22 巻 p. 17-26

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抄録
ハンス・ライグラフ(Hans Leygraf, 1920-2011)は、スウェーデン出身のピアニストであり、高名な教育者であった。本稿の目的は、異なる年代に収録されたライグラフの演奏解釈の比較検討および彼の言説に照らした考察を通して、彼自身の音楽表現を支える探究の視点を明らかにすることである。彼がF.シューベルト《楽興の時》第6番の解説を行う、1990 年代および2000 年代に収録された2点の視聴覚資料を検討の対象とし、比較、考察を行った。ライグラフの演奏解釈は、楽譜上の限られた情報から「変化」を読み解き、その時々の彼の言葉によって表現されるものであった。また、2点の資料の、一方においては特に作曲者の視点から客観的に分析する側面が、一方においては特に演奏者の視点から主観的に捉え直し「再構成」する側面が表れているといえることもわかった。加えて、ライグラフの言説に照らし、後年の資料における彼の解説は、シンプルな視点を通して、音楽の複雑で曖昧な世界と向き合う契機をもたらしているといえることを示した。
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