1989 年 12 巻 4 号 p. 121-127
本研究はマン・マシン・インターフェイスの開発において,利用者の心理的反応を重視する立場からの研究方法論を論じたものである.従来,インターフェイスに対する人間の心理的反応が物理的要因の交互作用によって影響を受けるという視点が不十分であった.そこで本研究では,マン・マシン・インターフェイスの1つである日本語音声入力法の開発に対して,利用者が感じる親しみやすさを心理的反応として取り上げ,物理的要因の影響を検討した. その結果,物理的性能の諸要因間には交互作用が存在すること,また,物理的性能が利用者の心理的反応に及ぼす影響には臨界域が存在することが明らかになった.ここから,一般にインターフェイスの開発において心理的反応を取り上げる際には, どの条件とどの条件が重なれば心理的反応が左右されるか,また,物理的性能がどのレベルを越すと心理的許容度が急激に上昇するか,といった観点が必要であることが論じられた.