マーケティングと広告の専門家たちは,幸福をもたらすはずである消費文化を推進してきた(Markin and Narayana 1976)。だが,その最終的な結果は必ずしも満足なものとは限らない(Monieson 1975)。不満(Kilbourne 1999)や不幸(Torres 2020)に陥ることもある。初期のマーケティング批評家たちのなかで際立った存在として,病的な雰囲気と歪んだ主体関係の創出に広告産業が果たす役割を強調したゴードン・ブレイン・ハンコックがいた。ハンコックはアフリカ系アメリカ人の広告批評家である。本稿は,ハンコックの経歴,彼が対処しようとした文化的環境,当時流布していた広告への批判,そしてこれらの問題に対するハンコックの貢献について概観する。本稿は,日常生活のなかで消費者を方向づけるマクロ,メゾ・マクロ,ミクロ・レベルでの現象である雰囲気を,実務家たちがどのように導き,研究者たちがどのように理論化しようとしたのかを含め,諸文献を貫く想定を明らかにすることに注意を払う。