順天堂醫事雑誌
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低酸素下における心筋細胞内マグネシウムの維持機構
華藤 恵美中村 京子家崎 貴文岡田 隆夫代田 浩之渡邉 マキノ
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2013 年 59 巻 3 号 p. 260-266

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抄録

目的: 心臓の虚血-再灌流に伴い心筋のマグネシウム濃度が低下することが知られている. 低酸素中に細胞外イオン化マグネシウム (Mg2+) 濃度を上昇させると心筋マグネシウム濃度の低下が抑制され, 心筋保護効果が得られるがその機序は明らかになっていない. われわれはMg2+濃度の高い細胞外から細胞内へマグネシウムが取り込まれ, 心機能が維持されると仮説を立て, 細胞内マグネシウムとの関連を検討した. 方法: 雄性Sprague Dawleyラットの心臓を摘出し, 定流量ランゲンドルフ灌流を行った. 細胞内Mg2+濃度 ([Mg2+] i) を低下させる作用のあるisoproterenol (iso) を灌流し, iso洗浄除去後の心機能と心筋マグネシウム含有量の関係を検討した. さらに単離心筋細胞を用いて細胞内Mg2+イメージング法により低酸素時の [Mg2+] i濃度の変化を検討した. 結果: 摘出灌流心モデルにおいて, isoを灌流後, 洗浄除去すると心機能が低下し, 心筋マグネシウム含有量は減少した. しかし細胞外高Mg2+存在下でisoを灌流した場合, iso洗浄除去後の心機能低下は改善され, 心筋マグネシウム含有量の減少も抑制された. 単離心筋細胞において [Mg2+] iは, 好気的条件下, 低酸素下ともに細胞外高Mg2+により有意に上昇したが, 低酸素下における [Mg2+] iの上昇は好気的条件下における [Mg2+] iよりも著明に高値であった. この [Mg2+] i上昇はTRPM7 (transient receptor potential melastatin 7) 阻害薬によって有意に抑制された. 結論: 低酸素もしくはisoなどにより心筋マグネシウム量が減少すると心機能が低下することが示唆された. この心機能低下は細胞外高Mg2+により改善するが, その機序は細胞外よりTRPM7を介し, Mg2+が細胞内へ流入する可能性が考えられた.

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© 2013 順天堂医学会
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