順天堂醫事雑誌
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59 巻, 3 号
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目次
Contents
特集 教授定年退職記念講演
  • 内山 安男
    2013 年 59 巻 3 号 p. 215-220
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2014/11/26
    ジャーナル フリー
    1972年に群馬大学医学部を卒業し, 臨床研修を経て, 基礎医学, 特に解剖学の世界に飛び込んで研究を始めた. 1977年にAlexander von Humboldt奨学生となり西ドイツのハノーバー医科大学の解剖学教室に留学した. ハノーバー医科大学で, サーカディアンリズムからみた肝細胞について, 様々な切り口から検討した. その結果, 細胞の多様な機能発現について学んだ. 帰国後, 様々な大学で研究を続けながら1991年に岩手医科大学の教授, 1995年に大阪大学医学部の教授となり私の研究テーマであるリソソーム/オートファジーとタンパク質分解, またオートファジー/リソソーム性細胞死について研究を進めた. リソソームカテプシンDを欠損するマウスの解析から, その表現型が神経性セロイドリポフスチン蓄積症のモデルマウスになりうることを明らかにした. また, オートファジー性神経細胞死の存在をほ乳類で初めて明らかにすることができた. これらの研究は, 私とともに歩んでくれた同僚と共同研究を進めてくれた方々のご支援の結果と考えている.
  • 伊藤 昌徳
    2013 年 59 巻 3 号 p. 221-231
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2014/11/26
    ジャーナル フリー
    私は石井昌三教授, 佐藤潔教授の薫陶をうけ, 40年間にわたり国際的レベルの脳神経外科学の習得および国際性を享受し, 国際的な脳神経外科の臨床, 手術, 教育, 研究に携わることができた.本講演において, 感謝をこめて懐古談として英語で口演させていただいた.本邦の脳神経外科学は他科に比べその歴史は新しく, 順天堂大学においては1968年 (昭和43年) に石井昌三教授により脳神経外科学講座が創設された.1972年 (昭和47年) 現2号館の落成とともに入局したが, この年に「外科学講座」から独立し, 新研修プログラムが発足.新脳外科病棟と新手術室で診療ならびに手術を開始した.本学脳神経外科の創設期, 成熟期に本学助手, 講師, 助教授として石井, 佐藤両教授の下で仕事をし, 東京都保健医療公社病院の部長, 本学浦安病院の教授としてOperative Neurosurgeryを実践することができた.現在, 新井一教授を中心に当教室は着実に発展の道をたどっている.本講演では, 1) 脳神経外科臨床研修とmentorship, 2) 基礎医学研究と外科医 (Surgeon Scientist) について, 3) 臨床脳神経外科学の指数関数的進歩とparadigmshift, 1970年代にはほとんど行われていなかった頭蓋底外科, 脳幹部腫瘍の外科, 脊髄髄内腫瘍の外科, 脳外科医の行う脊椎脊髄外科の進歩について自験例を中心に解説した.また, 脳神経外科以外の分野においても研究する機会を得たので, 4) 米国留学と医学英語習得と教育, 医学英語検定試験の立ち上げと実施, 学会における同時通訳の役割と同時通訳研修法, 5) 社会医学として日米の医療制度, 医療保険の比較研究について概説した.
  • 一青 勝雄
    2013 年 59 巻 3 号 p. 232-235
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2014/11/26
    ジャーナル フリー
    私と人工股関節の出会いは1977年フランスに留学しパリのl'APAS病院でLord教授に出会いLord式セメントレス人工股関節手術を学んだのがはじめである. Lord式セメントレス人工股関節はネジ込み式ringとビーズ状表面加工したstemからなり, 1975年より臨床使用されるようになった. フランスから帰国後1979年より使用開始し277関節に行った. 20年生存率は臼蓋コンポーネントで55.1%であった. ステムは, その形状からbeaded-coated stemとslit-surface stemに分けて検討し, 20年生存率はそれぞれ92.2%, 27.3%で有意にbeaded-coated stemの生存率が良好であった. よって, 初期Lord式ステムであるbeaded-coated stemの形状は, セメントレスステムとして, stress shieldingの問題はあったが有用であると考えられた. しかしながら, ネジ込式臼蓋コンポーネントおよびslit-surface stemは, loosening (ゆるみ) してくる症例が多く今後も注意が必要である.
  • 石 和久
    2013 年 59 巻 3 号 p. 236-240
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2014/11/26
    ジャーナル フリー
    子宮頸癌の原因は高リスク型ヒトパピローマウイルス (Human papilloma virus;HPV) の持続感染であることがすでに解明され, このことで2008年Zur Hausenがノーベル医学賞を受賞した. 子宮頸癌予防には定期検診が必要であるが, しかし日本の子宮頸癌検診には問題点が2点指摘されている. 1点は定期健診受診率が低いこと, もう1点は細胞診の精度が低いことである. 定期健診にHPV検査と細胞診を組み合わせることにより, さらなる子宮頸癌検診の精度が高まり, 前癌病変の100%近くが検出されることが今後期待される. さらに現在HPVワクチンが発展してきており, 10歳代で予防ワクチンを受け, さらにこれら検診により, 将来子宮頸癌がなくなることが期待される. このためにも子宮頸癌検診精度を上げるために細胞診単独よりもHPV DNA検査併用の意義がある.
  • 平野 隆雄
    2013 年 59 巻 3 号 p. 241-245
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2014/11/26
    ジャーナル フリー
    私は1975年岩手医科大学卒業後, ただちに同年6月, 順天堂病院の内科研修医として医師としてのスタートを切りました. 2年間の研修終了後, 1977年膠原病内科に入局し, 1978年から5年間基礎免疫学の研究を, 東京大学で3年間, ニューヨーク大学で2年間させていただきました. この期間で免疫学の素晴らしさを教えていただきました. 帰国後の1983年より, 再び膠原病内科にて臨床, 免疫学の研究 (IgE産生の統御) を17年間続けてまいりました. 1994年からは血液内科に移り, 血液学の臨床, 研究 (主として移植免疫) に11年間携わってまいりました. 2005年からは新設された順天堂大学医学部附属練馬病院の血液内科スタッフとして8年間, 主として臨床, 教育に力を入れてまいりました. しかし長い間の順天堂で過ごした時期を通して, 私にとって最も重要であったことは, 多くの人々 (恩師, 先輩, 同僚, 後輩, 看護師, 大学スタッフ, 患者さん) との繋がり, 和であります. このことが37年間での順天堂で学んだことであります.
  • 比留間 政太郎
    2013 年 59 巻 3 号 p. 246-250
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2014/11/26
    ジャーナル フリー
    ほぼ10年前より, 白癬菌の一種であるTrichophyton tonsuransが, 格闘技選手を介して日本へ持ち込まれ, 本感染症が急激に増加し大きな問題となっている. われわれは, この感染症拡大を阻止するために, 感染対策を行ってきた. 方法: 2008年-2012年の5年間にわたって, 東京学生柔道連盟加盟の一部校, 約20校の延べ6,133名の柔道選手について, ブラシ培養法を行い陽性者を調べた. 結果: 6,133名中418名 (6.0%) が陽性であった. a. ブラシ培養法で2集落以下は, ミコナゾール含有シャンプで治療し, b. 3集落以上の者は, 1) itraconazoleを100mg/日を6週間, または400mg/日を1週間内服, または2) terbinafine 125mg/日を6週間, または500mg/日を1週間投与した. この治療法で, 325名中311名 (87.1%) が, 菌が陰性化した. 陰性化しなかった者の多くは治療を中断した者であった. 考察: 今回の治療法は有効であった. しかし, 一部の者は治療を完了できなかった. この感染症を阻止するための次のステップは, 1) よりよい治療法の開発, 2) この感染症の予防と制御法のガイドラインの改良, 3) 治療を貫徹するために皮膚科専門医のネットワークづくりをすることが急務である.
原著
  • 瀬沼 幸司, 三浦 佳代, 三浦 弘善, 堀本 義哉, 中井 克也, 島田 聡子, 荒川 敦, 園上 浩司, 齊藤 光江
    2013 年 59 巻 3 号 p. 251-259
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2014/11/26
    ジャーナル フリー
    目的: 乳癌に対する術前化学療法 (Preoperative Systemic Chemotherapy;PSC) の有効性を, 組織学的治療効果と生物学的マーカーとの関連性から検討を行ったので報告する. 対象: 2006年1月から2008年8月に当院で, 原発性乳癌と診断されPSCを施行し免疫組織学的評価が可能であった144例. 方法: PSCによる組織学的完全奏効 (Pathological complete response;pCR) とホルモン受容体, Human epidermal growth factor receptor type 2 (HER2), Ki-67, トポイソメラーゼIIα (TopoisomeraseIIα;TopoIIα) との関連, またHER2とTopoIIαとホルモン受容体との相関, Intrinsic subtypeなどとの関連を検討した. 結果: 16例 (11%) でpCRを認めた. ホルモン受容体陰性例は有意差をもって, ホルモン受容体陽性例よりpCR率が高かった. HER2陽性例のpCR率はHER2陰性例のpCR率と有意差を認めなかった. Ki-67高発現例は有意差をもって非高発現例よりpCR率が高かった. TopoIIα発現の高低でpCR率に有意差を認めなかった. HER2とTopoIIαとホルモン受容体との関連性は認められなかった. Intrinsic subtype別では, HER2 typeとTriple negative typeは, 有意差をもってLuminal A/B typeよりpCR率が高かった. 結論: 原発性乳癌におけるPSCにおいて, ホルモン受容体陰性, Ki-67高発現, Intrinsic subtype別のHER2 typeとTriple negative typeが化学療法の効果に影響を及ぼすことが示された.
  • 華藤 恵美, 中村 京子, 家崎 貴文, 岡田 隆夫, 代田 浩之, 渡邉 マキノ
    2013 年 59 巻 3 号 p. 260-266
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2014/11/26
    ジャーナル フリー
    目的: 心臓の虚血-再灌流に伴い心筋のマグネシウム濃度が低下することが知られている. 低酸素中に細胞外イオン化マグネシウム (Mg2+) 濃度を上昇させると心筋マグネシウム濃度の低下が抑制され, 心筋保護効果が得られるがその機序は明らかになっていない. われわれはMg2+濃度の高い細胞外から細胞内へマグネシウムが取り込まれ, 心機能が維持されると仮説を立て, 細胞内マグネシウムとの関連を検討した. 方法: 雄性Sprague Dawleyラットの心臓を摘出し, 定流量ランゲンドルフ灌流を行った. 細胞内Mg2+濃度 ([Mg2+] i) を低下させる作用のあるisoproterenol (iso) を灌流し, iso洗浄除去後の心機能と心筋マグネシウム含有量の関係を検討した. さらに単離心筋細胞を用いて細胞内Mg2+イメージング法により低酸素時の [Mg2+] i濃度の変化を検討した. 結果: 摘出灌流心モデルにおいて, isoを灌流後, 洗浄除去すると心機能が低下し, 心筋マグネシウム含有量は減少した. しかし細胞外高Mg2+存在下でisoを灌流した場合, iso洗浄除去後の心機能低下は改善され, 心筋マグネシウム含有量の減少も抑制された. 単離心筋細胞において [Mg2+] iは, 好気的条件下, 低酸素下ともに細胞外高Mg2+により有意に上昇したが, 低酸素下における [Mg2+] iの上昇は好気的条件下における [Mg2+] iよりも著明に高値であった. この [Mg2+] i上昇はTRPM7 (transient receptor potential melastatin 7) 阻害薬によって有意に抑制された. 結論: 低酸素もしくはisoなどにより心筋マグネシウム量が減少すると心機能が低下することが示唆された. この心機能低下は細胞外高Mg2+により改善するが, その機序は細胞外よりTRPM7を介し, Mg2+が細胞内へ流入する可能性が考えられた.
  • 森 創, 堀口 逸子, 清水 隆司
    2013 年 59 巻 3 号 p. 267-272
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2014/11/26
    ジャーナル フリー
    目的: 開眼状態における脳波測定法を用いた前頭葉脳波スペクトル分析のうつ状態像の判定における有効性について検討した. 対象と方法: うつ状態群22名ならびに対照群21名に対して開眼状態での脳波測定による脳波スペクトル分析を行った. 脳波はFp1, Fp2に相当する位置より導出した. またSelf-rating Depression Scale, Social Adaptation Self-evaluation Scale, Gotow Alexithymia Questionnaireの質問紙調査を行った. 結果: 脳波スペクトル分析において, S波のパワースペクトル値は, うつ状態群で有意な増加を認めた. 脳波の各成分帯域の出現頻度は, うつ状態群でのα成分帯域の有意な低下およびθ成分帯域の有意な増加を認めた. 各質問紙調査においてうつ状態群と対照群に有意差を認めた. 対照群とうつ状態群の設定は, 質問紙調査結果等から妥当と考えられた. 考察: うつ状態群は, 安静時脳波による先行研究と同様に活動時脳波のパワースペクトルが増大すると考えられた. 脳波成分の出現頻度は, 安静時脳波による先行研究の結果と異なるが, 活動時脳波における特徴を示していると考えられた. 近年うつ病の診断や治療効果の判定などについては, 精神科医による問診, また質問紙等をはじめとした評価尺度が多数存在するが, 生理的指標を用いた客観的検査法はいまだ開発途上にある. 脳波検査は, 頭皮電極で得られる脳の電気活動を時間的, 空間的に記録し, 脳の活動状況を客観的に評価するものであるが, 従来の脳波検査は, 電源雑音を遮蔽した専用の脳波計測室で行う必要があった. 近年, 遮蔽空間が不要で覚醒開眼生活行動下での測定が可能な小型脳波計が開発されたが, 今回の結果より, 開眼状態における脳波測定法を用いた前頭葉脳波スペクトル分析について, うつ状態診断補助としての利用可能性が示唆された. 本機器を使用した検査は, 使用に際して環境的制限が少ないこと, さらには被験者にとって非侵襲的であり負担が少ないことから, さらなる研究により利用可能性を検討すべきと考えられた.
報告
  • -第38回成田医学教育ワークショップ・第12回成田卒後教育ワークショップ報告-
    檀原 高, 清水 俊明, 西塚 雅子, 岡田 隆夫, 長岡 功, 建部 一夫, 中野 裕康, 櫻井 隆, 宇賀 貴紀, 大友 義之, 鈴木 ...
    2013 年 59 巻 3 号 p. 273-278
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2014/11/26
    ジャーナル フリー
    平成24年7月20・21日に順天堂大学医学教育ワークショップ (成田ワークショップ) が開催された. 182名 (教員103名, 医学部学生23名, 大学院生17名, 臨床研修医26名, 事務スタッフ13名) が参加した. 現在の卒前医学教育と大学院教育および臨床研修の改革に向けた提案や展望について, それぞれの分科会で討議が行われた. 今回のワークショップでは, 『一般教養・基礎医学・臨床医学教育のあるべき姿とは』をテーマに討論がワークショップ形式で行われた. 卒前医学教育分科会では, 一般教養・基礎医学・臨床医学・臨床実習の総点検, 卒後医学教育分科会では, 大学院教育と卒後診療研修について討議が行われた.
症例報告
  • A Report of Five Cases
    YUICHIRO MARUYAMA, KATSUO SHITOTO, TOMONORI BABA, KAZUO KANEKO
    2013 年 59 巻 3 号 p. 279-283
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2014/11/26
    ジャーナル フリー
    Objective: Adjacent joints including hip joints and knee joints mutually affect each other due to leg length discrepancy and extremity malposition, and severe deformity of these joints may progress. Coxitis knee is the name applied to the particular form of osteoarthritis associated with ankylosis or fixation of the hip joint. Rotational limitations of hip joint and leg length discrepancy cause severe stress to the coxitis knee during walking, resulting in external rotation of the tibia and valgus deformity of the knees, which increase the load on the knee. Materials: In this paper, we describe five cases of total knee arthroplasty performed for severe valgus deformity in patients with ipsilateral coxarthrosis. We investigated the conditions and issues of concern in these patients and report the outcomes. Conclusions: Since the condition of the hip joints is significantly related to valgus knee, it is necessary to carry out comprehensive investigation of the alignment of the legs including not only knee joints but also hip joints. If there is no other option but surgical treatment of the knee joints, then this approach must be prioritized and various efforts must be made.
症例報告検討会
  • 本田 大介, 和泉 裕子, 合田 朋仁, 長町 誠嗣, 大澤 勲, 堀越 哲, 関根 亮, 栗崎 愛子, 渡辺 純夫, 八尾 隆史, 富野 ...
    2013 年 59 巻 3 号 p. 284-288
    発行日: 2013/06/30
    公開日: 2014/11/26
    ジャーナル フリー
    多彩な臨床症状を呈する全身疾患は大変多く, 年齢・性別・症状・臨床経過などから慎重に鑑別診断を進める必要がある. その一つにアミロイドーシスがあり, 原発性あるいは続発性に分類される. 原発性アミロイドーシスは, 形質細胞やリンパ球系腫瘍細胞により異型免疫グロブリン軽鎖や重鎖を産生することにより引き起こされる. 今回, 食思不振と下痢, 体重減少を契機に様々な臨床所見を呈し, 全身性アミロイドーシスと診断されるも, 治療抵抗性の多臓器不全で死に至り, 病理解剖によってMGUS (monoclonal gammopathy of undetermined significance) を原因とする原発性アミロイドーシスと診断された1例を経験した. MGUS症例のうち, 多発性骨髄腫やアミロイドーシスなどへ進展するものは年にわずか1-1.5%である. 多彩な臨床症状を呈する状態では, 原発性アミロイドーシスも念頭に鑑別することが重要であり, 本症例を報告する.
症例に学ぶ
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