2013 年 59 巻 3 号 p. 251-259
目的: 乳癌に対する術前化学療法 (Preoperative Systemic Chemotherapy;PSC) の有効性を, 組織学的治療効果と生物学的マーカーとの関連性から検討を行ったので報告する. 対象: 2006年1月から2008年8月に当院で, 原発性乳癌と診断されPSCを施行し免疫組織学的評価が可能であった144例. 方法: PSCによる組織学的完全奏効 (Pathological complete response;pCR) とホルモン受容体, Human epidermal growth factor receptor type 2 (HER2), Ki-67, トポイソメラーゼIIα (TopoisomeraseIIα;TopoIIα) との関連, またHER2とTopoIIαとホルモン受容体との相関, Intrinsic subtypeなどとの関連を検討した. 結果: 16例 (11%) でpCRを認めた. ホルモン受容体陰性例は有意差をもって, ホルモン受容体陽性例よりpCR率が高かった. HER2陽性例のpCR率はHER2陰性例のpCR率と有意差を認めなかった. Ki-67高発現例は有意差をもって非高発現例よりpCR率が高かった. TopoIIα発現の高低でpCR率に有意差を認めなかった. HER2とTopoIIαとホルモン受容体との関連性は認められなかった. Intrinsic subtype別では, HER2 typeとTriple negative typeは, 有意差をもってLuminal A/B typeよりpCR率が高かった. 結論: 原発性乳癌におけるPSCにおいて, ホルモン受容体陰性, Ki-67高発現, Intrinsic subtype別のHER2 typeとTriple negative typeが化学療法の効果に影響を及ぼすことが示された.