抄録
妊馬血清性性腺刺激ホルモン(PMSG)とヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)を投与して誘起したマウスの卵成熟過程における卵子卵丘複合体の細胞間連絡の推移と電子顕微鏡レベルの形態変化を調べた.hCG投与後,3および9時間で卵核胞の崩壊と第2減数分裂中期への移行が観察された.卵核胞崩壊を誘起し膨化した卵丘をもつ卵子卵丘複合体では卵丘細胞間への物質の蓄積と卵丘細胞の細胞質突起の退縮が認められた.色素(ルシファーイエロー)を卵母細胞に注入し周囲の卵丘細胞への拡散の程度によって卵成熟にともなう細胞間連絡の消長を調べたところ,hCG投与後時間の経過にともない色素の移動が低下した.卵核胞を崩壊した卵子卵丘複合体での移動はきわめて限定的であったが,卵丘細胞と卵母細胞の間には結合装置が観察された.このようなことから卵核胞崩壊後にも卵子卵丘複合体の細胞間結合装置は残っているものの卵成熟にともなって卵丘細胞間物質の蓄積が進行すると細胞間の連絡機能は低下するものと推察された.