Journal of Mammalian Ova Research
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高齢ゴールデンハムスターにおける胚の初期発生能について
吉澤 緑
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1995 年 12 巻 2 号 p. 107-111

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抄録
15~16か月齢の経産高齢ゴールデンハムスター24頭および3~4か月齢の未経産ゴールデンハムスター32頭を用い,母体の加齢が胚の初期発生能に与える影響について調査した.排卵卵子数,受精卵子数,桑実胚および胚盤胞への発生数および着床胚数を調べ,併せて第1分割期の染色体標本を作製し,分裂中期像の出現率を比較検討した.1細胞期卵子の1頭あたりの平均回収卵子数は,若齢群15.1個,高齢群13.4個で両群間に有意な差は見られなかった.また,透明帯だけの異常卵子(shell eggs)が,高齢群において数多く観察された.これらの卵子は,以前に排卵された未受精卵子が退行したものと考えられ,卵管あるいは卵管子宮接合部のどこかに滞留していたものと思われた.排卵推定時より69~72時間後に,子宮灌流を行うことにより得られた正常な桑実胚もしくは胚盤胞の平均数は,若齢群では12.4個,高齢群では4.1個で,高齢群において有意に少なかった(P<0.01).交配後8日目における脱落膜の平均数は,若齢群で13.4個,高齢群では1.4個であり,正常胚の平均数は,12.5個,高齢群0.5個で,いずれも高齢群において有意に少なかった(P<0.001).第1分割期の染色体像を示す卵子は,若齢群では97.2%であったが,高齢群ではわずかに6.7%にとどまった.これらのことから,高齢群では,受精が遅延され,その結果生じた胚の発生能力も若齢群の卵子より劣ることが推察された.
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© 1995 日本卵子学会
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