Journal of Mammalian Ova Research
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12 巻, 2 号
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Review
Original
  • 板垣 佳明, 木村 直子, 山中 昌哉, 須藤 鎮世
    1995 年 12 巻 2 号 p. 73-78
    発行日: 1995年
    公開日: 2007/03/01
    ジャーナル フリー
    体外成熟-体外受精によって作出した牛胚を第1卵割時期に従って分類し,これらの2-細胞期胚のその後の脱出胚盤胞までの発生と性について体外培養とPCRによる性判別によって検討した.体外受精に供した669個の胚のうち,媒精後22,26,30および44時間で選んだ卵割胚はそれぞれ124,227,88および65個であった.これらの胚を卵丘細胞層の拡がった同じ培地に別々に移して10日間共培養した.媒精後22,26,30 および44時間で選んだ胚の脱出胚盤胞への発生率はそれぞれ56.5,40.1,21.6および4.6%となり,これらの間には統計学的な有意な差がみられた(P<0.05).さらに,早く卵割した胚(媒精後22および26時間)では遅く卵割した胚(媒精後30および44時間)に較べて脱出胚盤胞の最初の出現あるいはピークが早かった.性判別のためにPCRに供した183個の脱出胚盤胞のうち,171個で性を判定することができ,全体での性比は51.5%(88/171)であった.早く卵割した胚および遅く卵割した胚から発生した脱出胚盤胞の性比はそれぞれ49.7%(74/149)および63.6%(14/22)となり,第1卵割時期に関係していなかった.以上の結果から,媒精から第1卵割の終了までの時間は性差についてではなく,胚のその後の発生に大きく影響することが示唆された.
  • 新村 末雄, 成田 成
    1995 年 12 巻 2 号 p. 79-83
    発行日: 1995年
    公開日: 2007/03/01
    ジャーナル フリー
    30日齢,60ないし90日齢,180ないし210日齢および270日齢のマウスの未受精卵子について,表面のレクチン結合が動物の加齢に伴ってどのように変化するかを組織化学的に調べた.UEA-IとLPAの結合はすべての動物の卵子でみられなかったが,PNA,DBA,SBA,BPA,GS-II,WGAおよびCon Aの結合は,いずれの日齢の動物の卵子においても常に弱度ないし強度に認められ,各日齢の動物の間で結合の強さに変化はみられなかった.一方,GS-IおよびMPAの結合は,30ないし210日齢の動物の卵子では中等度および弱度であったが,270日齢の動物の卵子では強まり,強度および中等度になった.以上の結果から,排卵直後のマウス未受精卵子表面の複合糖質はガラクトース,N-アセチルガラクトサミン,N-アセチルグルコサミンおよびマンノースを含んでおり,このうちのガラクトースとN-アセチルガラクトサミンの量は加齢動物の卵子で増加することが推察された.
  • 小川 英彦, 森 匡, 清水 弘
    1995 年 12 巻 2 号 p. 85-93
    発行日: 1995年
    公開日: 2007/03/01
    ジャーナル フリー
    マウス4細胞期胚の割球間接触のコンパクションにおける必要性を,初期4細胞期胚を割球分離し,0,4,8時間後に再集合した胚を用いて検討した.その結果,4および8時間後に再集合した胚でコンパクションに遅れが見られた.そこで,コンパクションの遅れの原因を調べるために,走査型電子顕微鏡による微絨毛の観察と,ギャップ結合構成タンパク質であるコネキシン43(Cx43)抗体を用いたギャップ結合の検出を行ったところ,4および8時間後に再集合した胚でギャップ結合形成に遅延がみられた.これらのことから,コンパクションにはギャップ結合の形成が関与していると考えられた.また,ギャップ結合を形成するためのコネキシン43の細胞内輸送の開始時期は,4細胞期胚の割球間接触の有無により影響を受けることが考えられた.
  • 渡辺 美佳, 星 和彦, 矢沢 浩之, 柳田 薫, 佐藤 章
    1995 年 12 巻 2 号 p. 95-100
    発行日: 1995年
    公開日: 2007/03/01
    ジャーナル フリー
    アルギン酸カルシウムを用いて人工透明帯を作成し,人工透明帯を装着したマウス2細胞期胚の初期発育と着床への効果を検討した.人工透明帯装着群の胚盤胞への発育率は95.0%を示し,透明帯除去群の83.0%に比べ有意(P<0.05)に高値であった.透明帯無処置群の胚盤胞への発育率は93.1%で,これは人工透明帯装着群と差をみなかった.人工透明帯を装着したまま発育した75個の胚盤胞を受卵雌に移植して12匹の正常な胎仔が得られた.これらの成績は,人工透明帯に用いられたアルギン酸カルシウムは初期胚の発育に有益であり,また子宮の中でタイムリーに溶解して着床を妨げないことを示している.透明帯除去卵によるヒト体外受精に,このアルギン酸カルシウムを用いた人工透明帯の応用が期待される.
  • 金山 伊吹, 佐藤 英明, 中山 泰亮, 宮本 元
    1995 年 12 巻 2 号 p. 101-106
    発行日: 1995年
    公開日: 2007/03/01
    ジャーナル フリー
    妊馬血清性性腺刺激ホルモン(PMSG)とヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)を投与して誘起したマウスの卵成熟過程における卵子卵丘複合体の細胞間連絡の推移と電子顕微鏡レベルの形態変化を調べた.hCG投与後,3および9時間で卵核胞の崩壊と第2減数分裂中期への移行が観察された.卵核胞崩壊を誘起し膨化した卵丘をもつ卵子卵丘複合体では卵丘細胞間への物質の蓄積と卵丘細胞の細胞質突起の退縮が認められた.色素(ルシファーイエロー)を卵母細胞に注入し周囲の卵丘細胞への拡散の程度によって卵成熟にともなう細胞間連絡の消長を調べたところ,hCG投与後時間の経過にともない色素の移動が低下した.卵核胞を崩壊した卵子卵丘複合体での移動はきわめて限定的であったが,卵丘細胞と卵母細胞の間には結合装置が観察された.このようなことから卵核胞崩壊後にも卵子卵丘複合体の細胞間結合装置は残っているものの卵成熟にともなって卵丘細胞間物質の蓄積が進行すると細胞間の連絡機能は低下するものと推察された.
  • 吉澤 緑
    1995 年 12 巻 2 号 p. 107-111
    発行日: 1995年
    公開日: 2007/03/01
    ジャーナル フリー
    15~16か月齢の経産高齢ゴールデンハムスター24頭および3~4か月齢の未経産ゴールデンハムスター32頭を用い,母体の加齢が胚の初期発生能に与える影響について調査した.排卵卵子数,受精卵子数,桑実胚および胚盤胞への発生数および着床胚数を調べ,併せて第1分割期の染色体標本を作製し,分裂中期像の出現率を比較検討した.1細胞期卵子の1頭あたりの平均回収卵子数は,若齢群15.1個,高齢群13.4個で両群間に有意な差は見られなかった.また,透明帯だけの異常卵子(shell eggs)が,高齢群において数多く観察された.これらの卵子は,以前に排卵された未受精卵子が退行したものと考えられ,卵管あるいは卵管子宮接合部のどこかに滞留していたものと思われた.排卵推定時より69~72時間後に,子宮灌流を行うことにより得られた正常な桑実胚もしくは胚盤胞の平均数は,若齢群では12.4個,高齢群では4.1個で,高齢群において有意に少なかった(P<0.01).交配後8日目における脱落膜の平均数は,若齢群で13.4個,高齢群では1.4個であり,正常胚の平均数は,12.5個,高齢群0.5個で,いずれも高齢群において有意に少なかった(P<0.001).第1分割期の染色体像を示す卵子は,若齢群では97.2%であったが,高齢群ではわずかに6.7%にとどまった.これらのことから,高齢群では,受精が遅延され,その結果生じた胚の発生能力も若齢群の卵子より劣ることが推察された.
  • Yahia Khandoker M. A. M., 西岡 昌拓, 辻井 弘忠
    1995 年 12 巻 2 号 p. 113-118
    発行日: 1995年
    公開日: 2007/03/01
    ジャーナル フリー
    ウシ血清アルブミンfraction-V(BSA-V)の脂肪酸含量を分析し,マウスおよびラット胚の発生に及ぼすBSA結合脂肪酸の影響を検討した.脂肪酸分析のためにガスクロマトグラフィーを行ない,脂肪酸の影響を検討するためにマウス4細胞期胚およびラット8細胞期胚を用いて培養実験を行なった.linoleic acid(54.55%)が脂肪酸含量の過半数を占め,以下,oleic(25.8%),stearic(12.27%)およびlinolenic(7.36%)acidであった.BSA結合脂肪酸はマウスおよびラット胚両発生に影響を及ぼし,ラットにおいてエネルギー的効果も示した.異なる脂肪酸(chemically defined lipid concentrate)の複合的な影響はマウスおよびラット胚両発生においてより効果的であった.
  • 紅林 賢臣, 三宅 正史, 片山 弥佳, 宮野 隆, 加藤 征史郎
    1995 年 12 巻 2 号 p. 119-125
    発行日: 1995年
    公開日: 2007/03/01
    ジャーナル フリー
    電気刺激により得られたブタ2倍体活性化卵子の発生能力が,培養液へのヒアルロン酸添加により改善されるか,否かについて調べた。体外成熟卵母細胞に1,500 V/cm DC,パルス幅100 μsecの単矩形波を負荷して,活性化卵子を作出した。活性化卵子を5 μg/mlのサイトカラシンBに4時間浸漬した後,第1極体のみを有する卵子を2倍体と判定し,これらを発生培養に供した。修正KRB液とWhittenの培養液,および各々の培養液に0.5 mg/mlのヒアルロン酸を添加した4種類の培養液を用いた。胚盤胞への発生率は修正KRB液(電気刺激144および168時間後,6%)よりWhittenの培養液(144時間後,12%;168時間後,14%)の方が高かった(P<0.05)。ヒアルロン酸を添加したとき,168時間後における胚盤胞への発生率は,修正KRB液で13%に,Whittenの培養液では28%に上昇し,また異常卵子の割合は減少した。電気刺激168時間後には,ヒアルロン酸を添加した培養液にのみ拡張胚盤胞が認められた。得られた胚盤胞の平均細胞数に培養液による有意な差は認められず,その数は21から61個であった。
原著
  • 大越 勝広, 新田 良平, 高野 博, 加藤 容子, 角田 幸雄
    1995 年 12 巻 2 号 p. 127-130
    発行日: 1995年
    公開日: 2007/03/01
    ジャーナル フリー
    体外受精卵をTCM199中で卵丘細胞とともに117時間共培養を行い,得られた8~16細胞期胚を2群に分けた.一方は対照群として,さらに5日間,TCM199中で卵丘細胞とともに共培養を行うか,あるいは共培養を行わずに10 μMβ -メルカプトエタノール(β-ME)を添加した培地を用いて培養し,胚盤胞への発育を調べた.他方は,核移植のドナー割球として用いた.核移植卵は,卵丘細胞とともにTCM199で共培養を行った.得られた8~16細胞期胚は2群に分けて,対照群の胚と同じように卵丘細胞と共培養を行うか,あるいは共培養を行わずに β-ME添加培地を用いて培養し,胚盤胞への発育を調べた.その結果,対照群の8~16細胞期胚でも核移植由来の胚でも, β-ME無添加の共培養とβ-MEを添加した非共培養における胚盤胞への発育率に差異はなかった.しかし,どちらの培養系でも核移植胚の胚盤胞への発育率は,対照胚の発育率に比べて有意に低かった.
  • 下澤 律浩, 河野 友宏, 小野寺 政一, 青野 文仁, 平井 八十一, 中原 達夫
    1995 年 12 巻 2 号 p. 131-137
    発行日: 1995年
    公開日: 2007/03/01
    ジャーナル フリー
    本実験は,初代培養,継代培養および継代凍結保存ウシ卵管上皮細胞の中間径フィラメントの変化を明らかにし,初代培養細胞および継代凍結保存細胞の胚発生支持能を検討するために実施した.ウシ卵管より単離し,培養された細胞の形態的変化は,継代凍結保存細胞を含め,継代5代目まで観察されなかった.また,間接免疫蛍光染色法の結果より,初代培養細胞では,抗サイトケラチン抗体の蛍光が検出されるが,抗ビメンチン抗体および抗デスミン抗体の蛍光が検出されないことから,これらの細胞は上皮細胞であることが強く示唆された.しかし,2代目以降の細胞で,ビメンチンの反応も検出されたため上皮細胞の性質は変化したことが示唆された.ウシ卵管上皮細胞の発生支持能を,ウシ単為発生胚との共培養によって検討した結果,胚盤胞までの発生率は初代および継代凍結保存ウシ卵管上皮細胞を用いた場合,それぞれ29.8%および28.3%であり,両区の間には有意差のないことが示された.このことから,ビメンチンの発現とウシ単為発生胚の発生支持能は無関係であることが推察された.
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