1997 年 14 巻 2 号 p. 132-138
ヒトの卵細胞質内精子注入(ICSI)による顕微授精での未受精卵の多くは活性化が起きていない.そこでICSI後の卵に電気刺激(EP)を加え,卵活性化を誘起すれば,受精が助長されると考えた.まずハムスターで,実際のEPによる卵活性化率と有効なEPによる卵内の一過性Ca2+上昇の形態を確認し,この条件をヒト卵に応用した.その結果375 V/cm-100 μsecのEPが有効と判明した.ヒトのICSI後の卵子にこの刺激を加え,ICSI後の成績を比較した.射出精液に運動精子が認められない症例について,ICSI後にEPを加えると受精率が60%(コントロール:38.8%)と有意に増加した.運動精子をICSIした場合にはEPを加えても受精率の増加は認められなかった(コントロール:69.7%,DC pulse:74.1%).不動精子の中には細胞膜が壊れた精子が含まれており,それらはsperm factorが失われていると考えられるが,そのような場合には,ICSI卵への電気刺激処理の有用性が示唆された.
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