Journal of Mammalian Ova Research
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14 巻, 2 号
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Review
Original
  • 柳田 薫, 片寄 治男, 星 和彦, 矢沢 浩之, 佐藤 章
    1997 年 14 巻 2 号 p. 132-138
    発行日: 1997年
    公開日: 2006/07/20
    ジャーナル フリー
    ヒトの卵細胞質内精子注入(ICSI)による顕微授精での未受精卵の多くは活性化が起きていない.そこでICSI後の卵に電気刺激(EP)を加え,卵活性化を誘起すれば,受精が助長されると考えた.まずハムスターで,実際のEPによる卵活性化率と有効なEPによる卵内の一過性Ca2+上昇の形態を確認し,この条件をヒト卵に応用した.その結果375 V/cm-100 μsecのEPが有効と判明した.ヒトのICSI後の卵子にこの刺激を加え,ICSI後の成績を比較した.射出精液に運動精子が認められない症例について,ICSI後にEPを加えると受精率が60%(コントロール:38.8%)と有意に増加した.運動精子をICSIした場合にはEPを加えても受精率の増加は認められなかった(コントロール:69.7%,DC pulse:74.1%).不動精子の中には細胞膜が壊れた精子が含まれており,それらはsperm factorが失われていると考えられるが,そのような場合には,ICSI卵への電気刺激処理の有用性が示唆された.
  • Larocca C., Romano J.E., Calvo J., Lago I., Fila D., Roses G., Viqueir ...
    1997 年 14 巻 2 号 p. 139-142
    発行日: 1997年
    公開日: 2006/07/20
    ジャーナル フリー
    ウシ体外受精における精子の受精能獲得処理法において,カフェイン・ヘパリン法(C)およびパーコール(45および90%)分離-カフェイン・ヘパリン法(P)を2種類の精液(種雄牛A,B)を用いて比較した.種雄牛Aにおける卵割率および胚盤胞発生率はC法(17.7%,7.7%)およびP法(14.2%,7.9%)の間で差はみられなかった.種雄牛BではC法(72.0%,46.9%)がP法(58.7%,28.2%)に対して有意に高い卵割率および胚盤胞発生率を示した(P<0.005).また,種雄牛の比較では,種雄牛B(65.8%,33.9%)が種雄牛A(16.0%,7.9%)よりも有意に高い卵割率および胚盤胞発生率を示した(P<0.05).以上の結果から,本実験で用いた条件では,精子のパーコール分離は,カフェイン・ヘパリン法と組み合わせたとき,種雄牛によっては発生率を低下させる可能性が示唆された.また,発生率に種雄牛間で差が認められた.
  • 荒木 真, 李 殷松, 福井 豊
    1997 年 14 巻 2 号 p. 143-150
    発行日: 1997年
    公開日: 2006/07/20
    ジャーナル フリー
    ウシ胎児血清(FCS)またはウシ血清アルブミン(BSA)を含む体外成熟培地に添加したヒトおよびマウス白血病抑制因子(leukemia inhibitory factor;LIF)の効果(実験1),およびBSAを添加したsemi-defined mediumを成熟培地に用いた場合のホルモンの有無および2種の培養方法(単一培養または集団培養)によるマウスLIFの効果(実験2)を検討した.ウシ未成熟卵子を24時間成熟培養した後,体外受精・培養を行い体外成熟率,受精率および発生率を観察した.実験1において,TCM-199に添加したヒトLIFおよびマウスLIF(1,000 U/ml)の体外成熟率,受精率および発生率への影響はみられなかった.実験2において,ホルモン添加区では無添加区に比べ正常および総受精率(P<0.01),分割率(P<0.05)が有意に増加した.集団培養は単一培養に比べ有意に(P<0.01)低い正常および総受精率,そして高い多精子受精率および発生率を示した.しかし,実験2においても成熟培地へのマウスLIFの添加効果はみられなかった.以上の結果から,成熟培地に添加したヒトLIFおよびマウスLIFはウシ卵子の体外成熟,受精および発生には顕著な効果を及ぼさないことが示唆された.
  • 岩崎 説雄, 田頭 保, 渡辺 都, 雨宮 直子, 東中川 徹
    1997 年 14 巻 2 号 p. 151-156
    発行日: 1997年
    公開日: 2006/07/20
    ジャーナル フリー
    染色体特定領域のDNAライブラリーを構築するためのストラテジーを確立するため,顕微切断およびPCRによりウシY染色体DNAの増幅を行った.リンパ球の分裂中期核板からY染色体を顕微鏡下で切断し,プロテナーゼKで分解後,フェノール/クロロホルムでDNA抽出を行った.抽出したDNAを制限酵素Sau3AIで消化し,EcoRI切断部位を導入した合成リンカー/プライマーに結合した.PCRにより増幅された染色体由来DNA断片はpUC19DNAのEcoRI切断部位にクローニングされた.ポジティブコントロールとして用いたSau3AI切断pUC19DNA断片は,少なくとも0.2 pg以上で増幅されることがわかった.Y染色体由来のDNA断片では,0.15-1.0 kbのスメアーバンドの増幅が認められた.65個のクローン(0.05-1.2 kb)のうちドットハイブリダイゼーションにより2個のクローンが雄特異的であったが,サザンハイブリダイゼーションではY染色体特異性は認められなかった.
  • 稲垣 昇, 鈴木 秋悦, 中戸川 則江, 北井 啓勝, 久慈 直昭, 吉村 泰典
    1997 年 14 巻 2 号 p. 157-168
    発行日: 1997年
    公開日: 2006/07/20
    ジャーナル フリー
    マウス卵の体外受精およびCa ionophore(A23187)やTPAによる人工的卵活性化法における第2極体放出・前核形成・蛋白質リン酸化に対して,PKCの活性化剤(TPA,diC8)や阻害剤(staurosporine,H7)およびカルシウムキレート剤(BAPTA-AM)の影響を検討し,卵活性化におけるPKCの役割に関して以下の知見を得た.PKCの活性化は前核形成を時間的に促進することが確認された.第2極体放出がPKC活性化剤によって抑制され,かつ細胞外Ca2+を除去した状態でTPAによって卵を活性化した場合には第2極体放出,polar body-like structureの形成およびactin filamentの凝集が抑制されることから,Ca2+が第2極体放出を促進するのに対して,PKCは細胞質分離という観点から第2極体の放出を抑制していると考えられた.しかし,PKCの阻害剤が雌性染色体の分離を抑制すること,およびTPAによって卵を活性化した場合,細胞内Ca2+の上昇に非依存的に雌性染色体分離が引き起こされることが確認されたことにより,雌性染色体の分離そのものはPKCの活性化によって引き起こされていることが強く示唆された.
  • 趙 佳, 服部 眞彰, 藤原 昇
    1997 年 14 巻 2 号 p. 169-174
    発行日: 1997年
    公開日: 2006/07/20
    ジャーナル フリー
    本実験では,ウシの体外受精において使用される凍結融解精子の生理機能に対する漢方薬の生理作用について検討した.効果の有無は,初期胚の発育程度から推定した.まず,体外受精(媒精)の際に,培養液(m-Hepes-BO)にBSAを添加しない場合には,漢方薬の効果が証明された.しかし,媒精液にBSAを同時に添加すると,さらに顕著な有効作用が認められた.とくに,今回使用した漢方薬の中で,温桂湯(TJ106)が最も有効であった.この薬は凍結融解精子の活力ならびに生存性に対して効果的であることが証明された.
  • 前田 照夫, 柳生 哲希
    1997 年 14 巻 2 号 p. 175-179
    発行日: 1997年
    公開日: 2006/07/20
    ジャーナル フリー
    成熟時における豚卵子の小胞体分布変化を検討した.卵核胞期(GV)の卵子では,表層部に小胞体の集合体が多数観察され,一部は固まり状を呈していた.第一次減数分裂前中期(Pro-MI)及び中期(MI)の卵子では,その固まり状のものは消失し,集合体数もGV期卵子と比較して減少していた.また,小胞体の集合体あるいは集合体の固まり状のものが卵子表層部に均一に分散し,細胞膜の内側に薄い層を形成していた.第二減数分裂中期(MII)の卵子では,その層はより明瞭になり,厚さを増していた.またその層の内側には小胞体の分布が少ない空間が認められた.以上の結果より,豚卵子においては成熟に伴って小胞体の分布が顕著に変化することが明らかとなった。
  • 遠藤 克, 金山 喜一
    1997 年 14 巻 2 号 p. 180-182
    発行日: 1997年
    公開日: 2006/07/20
    ジャーナル フリー
    精子のgapacitationとacrosome reactionにプロゲステロンが重要な役割を果たしている.今回著者らは,抗プロゲステロン製剤(RU 486)が,受精に及ぼす影響について検討する目的で,zona-free hamster eggへのヒト精子の侵入に及ぼす影響について検討した.その結果,対照群においては80.7%にヒト精子の侵入が認められたのに対して,RU 486群では,10 μMで67.0%,15 μMで47.9%,20 μMで35.2%,25 μMで27.0%,30 μMで4.8%の侵入が認められ,RU 486の濃度が増加するに伴って低下することが明らかとなった.このように,RU 486が透明帯除去ハムスター卵へのヒト精子の侵入を阻止することが示された.この要因としては,RU 486がヒト精子細胞内におけるCa2+動員機構に影響を及ぼしCa2+濃度を低下させることによってacrosome reactionを阻害することが推測される.
  • 沈 香菊, 平田 和正, 宮野 隆, 加藤 征史郎
    1997 年 14 巻 2 号 p. 183-190
    発行日: 1997年
    公開日: 2006/07/20
    ジャーナル フリー
    ブタ卵巣中の直径0.5~0.7 mmの初期胞状卵胞から,卵母細胞-卵丘細胞-壁顆粒膜細胞複合体(OCG複合体)を採取し,コラーゲンゲルに包埋して8日間培養した.培養液にFSH,dbcAMP,estradiol-17β(E2)あるいはEGFを添加し,OCG複合体の卵胞腔形成に対する直接作用を検討した.培養1日後,OCG複合体は一旦閉じた構造を形成した.その後,FSHあるいはdbcAMP添加区では,胞状卵胞様の構造が形成された.一方,E2あるいはEGF添加区では,対照区と同様に胞状卵胞様の構造は形成されなかった.FSHあるいはdbcAMP添加区において形成された胞状卵胞様構造の内部には,卵巣内の胞状卵胞の卵胞腔液と同様なタンパク質が蓄積されていた.以上の結果から,FSHはブタの顆粒膜細胞を刺激し,cAMPを介して卵胞腔形成を誘起すること,また,EGFはブタの卵胞腔形成に対して単独では作用しないことが示唆された.
  • 鈴木 裕之, 藤原 琢磨, Yang Xiangzhong
    1997 年 14 巻 2 号 p. 191-197
    発行日: 1997年
    公開日: 2006/07/20
    ジャーナル フリー
    ハムスター卵母細胞-卵丘細胞複合体を得るために,卵核胞期(GV)または第一成熟分裂中期(MI)のものは胞状卵胞を切開し,第二成熟分裂中期(MII)のものは卵管を灌流して回収した。各ステージにおける卵母細胞ならびにそれを取り囲む細胞群の表面微細構造を走査型電子顕微鏡(走査電顕)を用いて観察した。卵母細胞の直径についても走査電顕観察時に測定した。卵丘細胞はGV期の卵母細胞で緊密に配列した構造を示した。それらはMI期とMII期に細胞間の空隙が拡大し,著しく膨化していた。透明帯はメッシュ様の構造を示し,MII期にはメッシュ穴の大きさと数が増加した。GV期の卵細胞膜には微絨毛が比較的疎らに配列していたが,成熟後は微絨毛の分布密度が増大した。卵母細胞の直径は成熟過程において82 μmから77 μmへと有意に減少した(P<0.01)。以上のように,ハムスター卵母細胞の成熟過程には,卵丘細胞の膨化,透明帯のメッシュ穴の増加,ならびに卵細胞膜の微絨毛の発達が含まれることが明らかとなった。
  • 賈 鶴鉉, 王 維華, 任 京淳, 丹羽 晧二
    1997 年 14 巻 2 号 p. 198-204
    発行日: 1997年
    公開日: 2006/07/20
    ジャーナル フリー
    修正TCM-199(TCM-199B)およびBSA除去Whitten培地(mWM)を用いてブタの卵胞卵-卵丘複合体を48時間培養した.10%ウシ胎児血清(FCS)あるいは10%ブタ卵胞液(PFF)とともに性腺刺激ホルモン(Gns: 10 IU eCG/ml + 10 IU hCG/ml)を添加することによって,完全な卵丘膨化が見られた.しかし,Gnsのみの添加では,TCM-199Bにおいて卵丘は適当に膨化したのに対して,mWMではまったく膨化しなかった.卵胞卵の成熟率は,いずれの培地においても,FCSあるいはPFFの存否にかかわらず,Gnsの添加によって有意に高くなった.GnsとともにFCSあるいはPFFを添加した場合,TCM-199Bでは成熟率は促進されなかったが,mWMでは促進された.Gns添加TCM-199Bで成熟した卵胞卵では,体外受精(IVF)後の雄性前核形成率は,FCSよりもPFFの共存下で有意に高くなった.また,Gns添加mWMでは,FCSは精子侵入を完全に抑制したが,PFFは精子侵入を抑制しなかったにもかかわらず,前核形成を促進しなかった.
Brief Note
  • 山海 直, 土屋 英明, 越後貫 成美, 長 文昭, 吉川 泰弘
    1997 年 14 巻 2 号 p. 205-208
    発行日: 1997年
    公開日: 2006/07/20
    ジャーナル フリー
    アカハラタマリン精巣上体精子の凍結保存を試みた.凍結精子は,融解洗浄により生存率70%以上の活性良好精子として回収された.caffeineとdibutyryl cyclic AMPを添加したTYH mediumで培養したところ,30分後にはhyperactivationの運動性を示す精子が確認された.また,性周期を考慮せずに摘出した卵巣から卵を採取し成熟培養を試みた.4個の卵巣から細胞質が比較的整っているGV期卵が59個採取できた.GVBDあるいは第1極体の放出は,24,48および72時間の培養でそれぞれ30,53および71%の卵で確認された.体外成熟した卵と凍結融解精子を用いて体外受精を試みたが,受精は確認されなかった.
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