Journal of Mammalian Ova Research
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2細胞期から胚盤胞期へ体外発生するハムスター胚と発生阻害ハムスター2細胞期胚のATP含量
堀内 俊孝山内 康弘山田 學
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1998 年 15 巻 1 号 p. 31-36

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抄録

グルコース(Glu)とリン酸塩(Pi)を含む培地で培養すると,ハムスター胚は2細胞期で発生を停止し,第二卵割を完了できないことが知られている.GluとPiの存在で,発生阻害がどのように生じるかは明らかでない.本研究では,5%非働化子牛血清加M199で2細胞期に発生停止させたハムスター胚のATP含量を測定し,GluとPiの含まない培養液(HECM3)で2細胞期から胚盤胞期へ体外発生するハムスター胚のATP含量と比較した.胚のATP量は,ATP依存性ルシフェリンールシフェラーゼ生物発光法によって測定した.平均ATP含量±標準誤差は,2細胞期で44.5±7.4 fmol/embryo,4細胞期で13.1±1.2 fmol/embryo,8細胞期で72.3±21.0 fmol/embryo,胚盤胞期で22.7±6.6 fmol/embryoであった.4細胞期と胚盤胞期で,8細胞期と比べ,ATP含量に有意な減少が認められた(P<0.05).一方,GluとPiを含む培養液(M199)で,2細胞期に発生停止させた胚の平均ATP含量±標準誤差は,98.3±17.1 fmol/embryoで,体外で発生を継続している胚のATP含量よりも有意に(P<0.05)高い濃度を示した.このことは,ハムスター2細胞期胚の発生停止は,部分的には,このATP高値,すなわち,チトクローム活性やATP合成能の低下が関与するものと考えられた.

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© 1998 日本卵子学会
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