Journal of Mammalian Ova Research
Online ISSN : 1347-5878
Print ISSN : 1341-7738
ISSN-L : 1341-7738
Original
キチン懸濁液の子宮内投与による牛の発情と排卵誘起
鈴木 逹行村上 正夫Sumantri CeceFahrudin Mokhamed川手 憲俊岡本 芳晴南 三郎
著者情報
ジャーナル フリー

1998 年 15 巻 3 号 p. 157-160

詳細
抄録

この研究はキチン懸濁液の注入による子宮内膜炎の治癒効果を評価するために行った.実験1では50 mlの懸濁液へキチンの60と80 mg/mlの濃度として投与した牛に明瞭な発情が現れた.そこで実験2ではキチン懸濁液の60 mg/mlを含む50 mlを黒毛和種牛(3-5歳,体重平均530 kg)の子宮内へ投与して,その有効性を確かめた.発情後(発情日=0)8-12日の黄体期に投与した21頭ではキチン投与後5-8日の間に19頭(90.5%)に発情がみられた.対照として生理食塩水50 mlを投与した3頭はいずれも投与後13日目(前回の発情から21日目)に発情を示し,このうち3頭の牛で調べたプロジェステロン値は投与前のそれぞれ6.3,6.3と2.6 ng/mlから投与後6日目に0.3,0.2と0.2 ng/mlに低下した.またキチン懸濁液を子宮内へ注入後24時間ごとに子宮内膜組織をバイオプシーした実験では2-3日後に多数の白血球の浸潤がみられた.実験3における子宮内膜炎の5頭ではいずれも投与後6-8日目に発情が誘起され,膿汁が消失し子宮に改善がみられた.この処置により誘起された発情周期に過剰排卵処置した4頭中2頭(8/12;%)から正常胚が得られた.以上の成績からキチン懸濁液の子宮内投与は牛の発情と排卵を誘起し,子宮内膜炎の治癒に有効と考えられた.

著者関連情報

この記事は最新の被引用情報を取得できません。

© 1998 日本卵子学会
前の記事 次の記事
feedback
Top