Journal of Mammalian Ova Research
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15 巻, 3 号
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Review
Original
  • 續木 靖浩, 坂本 朋康, 芦澤 幸二, 藤原 昇
    1998 年 15 巻 3 号 p. 128-131
    発行日: 1998年
    公開日: 2006/07/08
    ジャーナル フリー
    豚卵母細胞の試験管内核成熟に及ぼす黄体形成ホルモン(LH,100 ng/ml)の影響について検討した.卵丘細胞の付着する卵母細胞(CO)と,卵丘細胞を機械的に剥離する卵母細胞(DO)とを,LHを添加あるいは無添加の成熟培地に導入し,42-43時間培養した.その結果,LHを添加する培地で成熟させるCO及びDOは,LH無添加の各々のものに比べて,第二成熟分裂中期(M-II)への核成熟率が有意に高くなった(P<0.05).次に,LHを添加する培地に,ギャップ結合の阻害剤である1-heptanolを添加あるいは無添加の区を設定しCO及びDOを培養すると,1-heptanol添加するCO及びDOは,無添加のものに比べてM-IIへの核成熟率が有意に低くなった(P<0.05).以上の結果から,LHは豚卵母細胞に付着している卵丘細胞の関与なしに,核成熟を促進する作用があるものと考えられた.また,その作用には,ギャップ結合を介する要因が関わっているものと推定された.
  • Parnpai Rangsun, 藤河 正憲, 南 直治郎, 山田 雅保, 内海 恭三
    1998 年 15 巻 3 号 p. 132-138
    発行日: 1998年
    公開日: 2006/07/08
    ジャーナル フリー
    ウシ胚盤胞期胚の内部細胞塊(ICM)より単離した原始外胚葉細胞の増殖におよぼす,白血病阻害因子(LIF),幹細胞増殖因子(SF),および,塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)の効果を検定した.免疫手術法により単離したICMをマウス胚性線維芽細胞上で1個あるいは3個培養し,培地に上記の成長因子を組み合わせて添加した.培養6~7日後にICMから原始外胚葉細胞のコロニーが形成されると小片に分割して継代を行った.その結果,すべての区において播種後1日目にICMの付着が認められ,ICMからの原始外胚葉細胞の増殖率は培養液中のICM数によらずSF + LIF添加区においてもっとも高かった.また3個のICMを培養した場合の方が原始外胚葉細胞の増殖率が高かった.さらに原始外胚葉細胞のコロニーを継代した結果,LIF + SF添加区において未分化状態を維持させたまま6代目まで継代することに成功した.
  • 澤向 共子, 鈴木 啓太, 小川 英彦, 清水 弘, 森 匡
    1998 年 15 巻 3 号 p. 139-145
    発行日: 1998年
    公開日: 2006/07/08
    ジャーナル フリー
    種々の時間成熟培養した豚卵子の表層顆粒(CG)分布を,FITC-PNAにより表層顆粒をラベルした後共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察した.成熟培養中の卵子の表層顆粒の分布パターンは,蛍光が卵細胞質中に観察された卵子(タイプ1),卵細胞膜直下にのみ認められた卵子(タイプ2)および蛍光が観察されなかった卵子(タイプ3)に分類した.成熟培養時間の延長によりタイプ1卵子の割合は減少し,逆にタイプ2卵子の割合は増加した.体外受精後,細胞膜周辺に少数の蛍光塊が認められる卵子(タイプ4)が観察された.培養24,30および36時間後に体外受精を行ったところ,受精率はこれらの3区で有意差はなかったが,卵子の体外成熟培養時間の延長に従って単精子受精率は増加した.また,タイプ4卵子の割合も24時間培養卵子に比べて30時間以上培養した卵子で高く,表層顆粒の開口分泌がより完全な卵子では多精子受精拒否が行われていたと考えられた.
  • 吉水 朋美, 尾畑 やよい, Carroll John, 河野 友宏
    1998 年 15 巻 3 号 p. 146-152
    発行日: 1998年
    公開日: 2006/07/08
    ジャーナル フリー
    ストロンチウムがマウス卵子を活性化することは知られているが,至適な活性化条件については十分検討されていない.本研究は,B6CBF1およびCD-1系統マウスの卵子を用いて,1.7 mMストロンチウム培養液への浸漬時間が卵子活性化へ与える影響を検討するとともに,単為発生胚の体外発生能および移植後の発生能について調べた.活性化率は,ストロンチウム処置時間に比例して上昇したが,両系統間で明らかな差異が認められた.B6CBF1マウス卵子では,30分の処置により90%以上の卵子が活性化したが,CD-1マウス卵子ではわずか5分の処置で80%に活性化が認められた.活性化卵子の大多数は,第2極体を放出して1前核を形成し,半数体の雌核発生胚となった.体外培養によりB6CBF1マウス単為発生卵は39%が胚盤胞へ発生したが,CD-1マウスでは有意に低く6%が胚盤胞へ発生したに過ぎなかった.胚盤胞への発生率は2倍体化により明らかに改善され,両系統でそれぞれ93%および58%に上昇した.移植試験の結果,ストロンチウムにより活性化した単為発生胚も,妊娠10日目の胎仔に発生することが確認された.また,細胞質内Ca2+濃度の変化を測定したところ,反復するCa2+濃度の上昇が観察された.これらの結果から,マウス卵子の活性化法としてストロンチウム処置は優れた方法であることが示された.
  • 青野 文仁, 河野 友宏, 下沢 律浩, 荻原 勲, 関沢 文夫, 斉藤 光男, 中原 達夫
    1998 年 15 巻 3 号 p. 153-156
    発行日: 1998年
    公開日: 2006/07/08
    ジャーナル フリー
    本研究はウシ核移植卵の発生に及ぼす電気刺激の影響について検討した.レシピエント卵子に30分間隔で電気刺激を3回与えることにより,卵子の活性化および前核形成率が改善された.反復する電気刺激によりレシピエント卵を活性化した核移植卵では,20%以上が胚盤胞へ発生した.さらに,細胞融合の前にレシピエント卵またはドナー核に対し再度電気刺激を与えることにより発生率が改善され,38%が胚盤胞へ発生した.これらのことから,反復した電気刺激は核移植卵の発生能を改善するのに有効であることが示された.
  • 鈴木 逹行, 村上 正夫, Sumantri Cece, Fahrudin Mokhamed, 川手 憲俊, 岡本 芳晴, 南 三郎
    1998 年 15 巻 3 号 p. 157-160
    発行日: 1998年
    公開日: 2006/07/08
    ジャーナル フリー
    この研究はキチン懸濁液の注入による子宮内膜炎の治癒効果を評価するために行った.実験1では50 mlの懸濁液へキチンの60と80 mg/mlの濃度として投与した牛に明瞭な発情が現れた.そこで実験2ではキチン懸濁液の60 mg/mlを含む50 mlを黒毛和種牛(3-5歳,体重平均530 kg)の子宮内へ投与して,その有効性を確かめた.発情後(発情日=0)8-12日の黄体期に投与した21頭ではキチン投与後5-8日の間に19頭(90.5%)に発情がみられた.対照として生理食塩水50 mlを投与した3頭はいずれも投与後13日目(前回の発情から21日目)に発情を示し,このうち3頭の牛で調べたプロジェステロン値は投与前のそれぞれ6.3,6.3と2.6 ng/mlから投与後6日目に0.3,0.2と0.2 ng/mlに低下した.またキチン懸濁液を子宮内へ注入後24時間ごとに子宮内膜組織をバイオプシーした実験では2-3日後に多数の白血球の浸潤がみられた.実験3における子宮内膜炎の5頭ではいずれも投与後6-8日目に発情が誘起され,膿汁が消失し子宮に改善がみられた.この処置により誘起された発情周期に過剰排卵処置した4頭中2頭(8/12;%)から正常胚が得られた.以上の成績からキチン懸濁液の子宮内投与は牛の発情と排卵を誘起し,子宮内膜炎の治癒に有効と考えられた.
  • 宮野 隆, 森竹 貞宜, 平田 和正, 三宅 正史, 加藤 征史郎
    1998 年 15 巻 3 号 p. 161-166
    発行日: 1998年
    公開日: 2006/07/08
    ジャーナル フリー
    ブタの卵巣から直径約100 μmの卵母細胞を含む直径0.5~1.0 mmの初期胞状卵胞を採取した.初期胞状卵胞をそのまま,初期胞状卵胞から取り出した卵母細胞-卵丘細胞-顆粒膜細胞複合体(OCG)および卵母細胞-卵丘細胞複合体(OC)をそれぞれコラーゲンゲルに包埋して8日間培養した.培養後に回収された卵母細胞では直径の増加は認められなかったが,卵胞,OCGおよびOC中のそれぞれ7%,53%および47%の卵母細胞は正常な形態を維持していた.培養前の卵母細胞のクロマチンは細い繊維状あるいはやや太い糸状で卵核胞内全体に広がっていた.一方,培養後の卵胞,OCGおよびOC中の0%,16%および12%の卵母細胞はGVI~MI期にあり,2%,21%および10%は雌性前核を形成していた.これらの結果は,OCGおよびOC培養法では8日の培養期間を通して37%および21%の卵母細胞は生存し続け,減数分裂を進行させることを示している.
  • 工藤 謙一, 田渕 伸, 樋口 俊郎, 覚正 信徳, 佐藤 嘉兵
    1998 年 15 巻 3 号 p. 167-172
    発行日: 1998年
    公開日: 2006/07/08
    ジャーナル フリー
    卵細胞が入っている培養液で満たされているクリアケースをボイスコイルモータで加振することにより発生した液流は,培養液中の卵細胞をクリアケース中心部へ一列に整列させる働きをする.一列に整列した卵細胞から,画像処理装置を用いて予め形状を記憶させておいた細胞のみを選別し,ホールディングピペット先端部へ迅速に自動位置決めすることを目指したマイクロマニピュレーションのシステムを試作した.本システムにより,プレパラートやシャーレ上の小さな培養液ドロップではなく,クリアケースに満たされた多量の培養液中の任意の位置にある多数の卵細胞を所定の位置に自動的に位置決めすることが可能になった.また,その後の細胞を探し出す工程とホールディングピペットに位置決めする時間を短縮することができた.
  • 新村 末雄, 二俣 ナナ
    1998 年 15 巻 3 号 p. 173-178
    発行日: 1998年
    公開日: 2006/07/08
    ジャーナル フリー
    胚盤胞形成過程の単為発生マウス胚について,割球および細胞の接合状態を形態学的に調べ,受精胚のものと比較した.単為発生胚において,接合装置は,割球が変形を起こしていない8および16細胞期では,いずれの部位にもみられなかったが,割球が変形を起こした8および16細胞期では,扁平割球間に閉鎖帯,デスモソーム前駆体およびギャップ結合が,また,球形割球間および球形割球と扁平割球の間にギャップ結合が,それぞれ出現した.桑実胚期では,さらに,扁平割球間にデスモソームが,球形割球間および球形割球と扁平割球の間にデスモソーム前駆体がみられた.胚盤胞期では,栄養膜細胞間に閉鎖帯,接着帯,デスモソーム,デスモソーム前駆体およびギャップ結合が,栄養膜細胞と内細胞塊細胞の間および内細胞塊細胞間にデスモソーム前駆体とギャップ結合が,それぞれ観察された.単為発生胚で観察された接合装置の種類と部位ならびにそれらの出現時期は,受精胚のものと相違なかった.一方,すべての時期の単為発生胚において,アクチンとサイトケラチンは,割球あるいは細胞の細胞質に分布しており,それらの分布状態は受精胚と相違なかったが,桑実胚期と胚盤胞期の単為発生胚では,これらを欠く割球あるいは細胞が少数みられた.以上の結果から,胚盤胞形成過程の単為発生胚における割球および細胞接合の状態は,受精胚と相違ないことが確かめられた.
  • Anas Mohamed-Kheir Idris, Elmileik Abdalla, 前田 照夫, 寺田 隆登
    1998 年 15 巻 3 号 p. 179-184
    発行日: 1998年
    公開日: 2006/07/08
    ジャーナル フリー
    ウシの卵巣から採取した卵丘細胞卵子複合体から卵丘細胞を除去した裸化卵子を種々の濃度の成長因子(EGF,IGF-I,インスリン)を添加した培地で24時間培養した.いずれの成長因子を添加した場合にも無添加の対照区に比べて有意に高い成熟卵率が得られた.卵巣から採取する時に既に裸化していた卵子の成熟卵率においては,培地にEGFを添加した影響は認められなかった.さらに,卵巣から採取した後に裸化させた卵子を,EGF添加培地およびEGFとerbstatin(チロシンキナーゼ・インヒビター)とを添加した培地で24時間培養した時には,裸化卵子におけるEGFの成熟促進作用がerbstatinにより打ち消された.以上の結果から,ウシ卵子の成熟はEGF,IGF-Iおよびインスリン等の成長因子により直接的に影響を受けること及び成長因子の成熟促進作用は卵子のチロシンキナーゼ情報伝達系を介していることが推察された.
  • 王 公金, 辻井 弘忠
    1998 年 15 巻 3 号 p. 185-190
    発行日: 1998年
    公開日: 2006/07/08
    ジャーナル フリー
    3H-パルミチン酸と14C-オレイン酸の双方の取込みが,1細胞期から胚盤胞まで全ての発生段階で認められた.これらの取込み割合は,8細胞期以降有意に増加した.卵子の脂質の極性脂質分画ではすべての卵割期で,中性脂質分画では桑実胚と胚盤胞でパルミチン酸の方がオレイン酸より有意に高かった.同様に中性脂質のトリグリセリド,モノグリセリド,ジグリセリドの分布割合も2細胞期を除く卵分割期で,極性脂質のコリンリン酸,エタノールアミンリン酸,スフィンゴミエリンの分布割合は各卵分割期で,パルミチン酸の方がオレイン酸より高かった.しかし,脂質アルコールとモノアミルグリセロール分布割合は各卵分割期で,イノシトール,セリンリン酸中のリゾホスファチジルコリンはオレイン酸の方がパルミチン酸より高かった.また,極性脂質のモノグリコシルグリセロールの分布割合はオレイン酸の方がパルミチン酸より有意に高かった。これら2つの脂肪酸の取込みおよび脂質への分布は,前に報告した単一脂肪酸とはかなり異なっていた.
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