ストロンチウムがマウス卵子を活性化することは知られているが,至適な活性化条件については十分検討されていない.本研究は,B6CBF1およびCD-1系統マウスの卵子を用いて,1.7 mMストロンチウム培養液への浸漬時間が卵子活性化へ与える影響を検討するとともに,単為発生胚の体外発生能および移植後の発生能について調べた.活性化率は,ストロンチウム処置時間に比例して上昇したが,両系統間で明らかな差異が認められた.B6CBF1マウス卵子では,30分の処置により90%以上の卵子が活性化したが,CD-1マウス卵子ではわずか5分の処置で80%に活性化が認められた.活性化卵子の大多数は,第2極体を放出して1前核を形成し,半数体の雌核発生胚となった.体外培養によりB6CBF1マウス単為発生卵は39%が胚盤胞へ発生したが,CD-1マウスでは有意に低く6%が胚盤胞へ発生したに過ぎなかった.胚盤胞への発生率は2倍体化により明らかに改善され,両系統でそれぞれ93%および58%に上昇した.移植試験の結果,ストロンチウムにより活性化した単為発生胚も,妊娠10日目の胎仔に発生することが確認された.また,細胞質内Ca
2+濃度の変化を測定したところ,反復するCa
2+濃度の上昇が観察された.これらの結果から,マウス卵子の活性化法としてストロンチウム処置は優れた方法であることが示された.
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