抄録
Time-lapse cinematography(TLC)を用いてヒト胚盤胞期胚を観察した.体外培養時のヒト胚盤胞期胚では,胞胚腔の拡張と虚脱が頻繁に起っており,TLC映像から,虚脱の機序は栄養膜細胞(trophectoderm; TE)の破綻であることが明らかとなった.また,内細胞塊(inner cell mass; ICM)が対側のTEと不規則に接着し,糸を引き合う現象(strand現象)が初めて確認でき,この現象により,ICMが2分されると単一のTE内に2個のICMが形成され,これが,1卵性双胎(monozygotic twin; MZT)の発生機序であることも明らかとなった.また,ヒト拡張胚盤胞が透明帯から脱出(hatching)する様式に2通り(inward,outward)が存在し,体外培養時にはinward様式が高率に認められたが,脱出にかかる所要時間は,有意にoutward様式が短く,生体内での生理的hatchingはoutward様式の可能性が考えられた.今回のTLC解析結果から,ヒト胚の胚盤胞期までの体外培養延長は,種々の胚に対する負の影響を招いている可能性が示唆され,体外培養環境の改善,あるいは,体外培養期間の短縮等,再考を要すると考えられた.