Journal of Mammalian Ova Research
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28 巻, 4 号
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総説(特集:最近の生殖医療のトピックス)
  • 清水 康史
    原稿種別: 総説 特集:最近の生殖医療のトピックス
    2011 年 28 巻 4 号 p. 151
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/10
    ジャーナル フリー
  • 見尾 保幸, 岩田 京子, 湯本 啓太郎, 井庭 裕美子
    原稿種別: 総説 特集:最近の生殖医療のトピックス
    2011 年 28 巻 4 号 p. 152-158
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/10
    ジャーナル フリー
    Time-lapse cinematography(TLC)を用いてヒト胚盤胞期胚を観察した.体外培養時のヒト胚盤胞期胚では,胞胚腔の拡張と虚脱が頻繁に起っており,TLC映像から,虚脱の機序は栄養膜細胞(trophectoderm; TE)の破綻であることが明らかとなった.また,内細胞塊(inner cell mass; ICM)が対側のTEと不規則に接着し,糸を引き合う現象(strand現象)が初めて確認でき,この現象により,ICMが2分されると単一のTE内に2個のICMが形成され,これが,1卵性双胎(monozygotic twin; MZT)の発生機序であることも明らかとなった.また,ヒト拡張胚盤胞が透明帯から脱出(hatching)する様式に2通り(inward,outward)が存在し,体外培養時にはinward様式が高率に認められたが,脱出にかかる所要時間は,有意にoutward様式が短く,生体内での生理的hatchingはoutward様式の可能性が考えられた.今回のTLC解析結果から,ヒト胚の胚盤胞期までの体外培養延長は,種々の胚に対する負の影響を招いている可能性が示唆され,体外培養環境の改善,あるいは,体外培養期間の短縮等,再考を要すると考えられた.
  • 塩谷 雅英, 苔口 昭次, 松本 由紀子, 水澤 友利, 山田 聡, 緒方 誠司, 岡本 恵理, 緒方 洋美, 神野 素子, 水田 真平, ...
    原稿種別: 総説 特集:最近の生殖医療のトピックス
    2011 年 28 巻 4 号 p. 159-167
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/10
    ジャーナル フリー
    多胎妊娠は ART の望ましく無い結果の一つである.多胎妊娠を減少させる効果的な方法は,移植胚数を制限することであるが,妊娠率が低下するならば患者にとっては受け入れがたいものとなる.当院では2006年より多胎妊娠予防に取り組んできた.その結果2005年は26.4%あった多胎妊娠率は減少し,ここ数年2?5%で推移している.平均胚移植数は,1.9個から1.2個に減少したが,妊娠率の低下はあまり無かった.そこでこれまでの治療内容を解析することにより,移植胚数を制限しつつ妊娠率を維持できた要因として以下の4点をあげることができる.第1は初期胚移植よりも胚盤胞移植を選択したこと,第2は新鮮胚移植よりも凍結胚移植を積極的に実施したこと,第3はSETの適応症例を厳密に選択したこと,第4は,胚盤胞を1個移植する際には,SEETを第1選択としてきたことである.本稿では,この4つの点を踏まえて,当院が多胎妊娠を予防するために歩んできた過程について報告する.
  • ―卵管内評価方法の確立―
    中川 浩次, 栗林 靖, 井上 正人, 杉山 力一
    原稿種別: 総説 特集:最近の生殖医療のトピックス
    2011 年 28 巻 4 号 p. 168-173
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/10
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡と卵管鏡を同時に施行することで卵管内の観察が可能となり,その評価方法を確立した(fallopian tube score:Fスコア).Fスコアは卵管内を粘膜癒着,粘膜消失,粘膜鈍化,debris,foreign body,異常血管の6つの指標をもとに観察し左右の卵管につき1項目につき1点を加点しその総和をスコアとする.原因不明不妊症例227名でFスコアが0点の割合は50.7%であり,残りの49.3%では卵管内に何らかの異常所見を認めた.低Fスコア群(Fスコア≦2)の妊娠率(35.3%)は,高Fスコア群(Fスコア≧3)の妊娠率(14.6%)に比較して有意に高値を示した( P<0.05).つまり,卵管内の異常が軽度の場合,術後に非ARTにおける妊娠が期待できることが明らかとなった.子宮内膜症性嚢胞合併症例では,Fスコア0点の割合が原因不明不妊症例に比して有意に高率(76.8% vs 50.7%)であり,卵管内に病変を有する症例の割合が低いことが明らかとなった.以上よりFスコアは術後の治療方針を決める上で意味のある指標である.
  • 松浦 宏治, 成瀬 恵治
    原稿種別: 総説 特集:最近の生殖医療のトピックス
    2011 年 28 巻 4 号 p. 174-179
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/10
    ジャーナル フリー
    高品質受精卵を得ることを目的とした最近の動的体外培養システム(Dynamic culture system: DCS)を用いた受精卵培養とその効果について解説する.培地や受精卵を移動させることの可能なDCSを用いた系の培養結果から,複数の生物種で物質拡散速度を上昇させることが胚発育を促進するための一つの手段であると考えられる.効果的な拡散が起こっているか否かは,体外培養時の培地内pHのその場評価によって知見が得られると思われる.さらに,DCSでは受精卵に負荷される機械的刺激による発育促進効果も存在すると推測される.その評価には負荷された機械的刺激量と細胞内情報伝達機構を同時に定量化すると良い.最後に,これらの知見および技術をヒト生殖補助医療に適用する際の注意点についても簡単に述べる.
  • ―東日本大震災に遭遇して―
    京野 廣一
    原稿種別: 総説 特集:最近の生殖医療のトピックス
    2011 年 28 巻 4 号 p. 180-189
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/10
    ジャーナル フリー
    2011年3月11日地震・津波・原子力発電事故という未曾有の大きな3つの災害に遭遇した.対策は過去に経験した災害とそれ以上の予測される事態を想定し立案することが肝要と痛感した.生殖補助医療施設で起こりうる事象の列挙・対策・マニュアル作成・実践的な定期訓練実施,その都度の気づきや経験を盛り込み改善する.患者やスタッフの安全確保,新鮮および凍結保存した胚・卵子・精子の安全管理ならびに複製記録分散保管,患者のプライバシー保護,他施設への搬送,災害時の説明・同意書作成など可能な限り実施すべきである.災害発生時に各自が瞬時になすべきことを理解・実施し,臨機応変に対応する.災害時に不可欠な水,食料,懐中電灯,ラジオ,電池,燃料など最低限必要な物品の準備(クリニック・自宅)や交通が遮断された時の帰宅手段,避難場所の周知,災害で困難な中での種々の連絡手段(患者・スタッフ・家族)の構築を考慮すべきである.
  • 吉田 淳
    原稿種別: 総説 特集:最近の生殖医療のトピックス
    2011 年 28 巻 4 号 p. 190-197
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/10
    ジャーナル フリー
    企業にとって社会的責任を重視することは,消費者の社会的満足につながり,株価も上昇することとなるが,医療機関においても,社会的責任の体制を構築することは,患者の信頼性と満足度,さらに医療の安全性の向上につながる.少子化対策に対し不妊治療の役割は大きいが,不妊治療は他の医療と異なり新しい生命の誕生を伴うため,提供する医療の結果が将来の社会に及ぼす影響は大きい.その一つ,体外受精や顕微授精では,一度精子と卵子を体の外に取り出して,できた胚を子宮に戻すため,卵子や精子の取り違え防止には,細心の注意を払う必要がある.さらに,体外受精や顕微授精の工程は器械によるオートメーション化ができないヒトの手を使った手作りの医療のため,胚を破壊,紛失するなどの医療事故が起こる可能性がある.従って,不妊治療を目的とする施設は,すべての工程を記録・透明化するなどして,患者から信頼が得られる施設となる必要がある.このような観点から,医療施設を訪れる人々や社会全体から信頼を得るため,企業・組織の社会的責任の考え方を不妊治療医療に置きかえて応用するのが非常に有効になる.医療機関の理念を決め,生命倫理と社会倫理をもって不妊治療を行い,患者から寄せられた要望や苦情の内容を対応策とともに開示し,定期的な監査を受け,かつ患者や職員の満足度を把握し,社会啓蒙活動を行いながら社会的責任を継続して果たすことが不妊治療専門医療機関において質を向上させることにつながる.
  • 石坂 和博, 永渕 富夫, 大矢 和宏, 関根 英明
    原稿種別: 総説 特集:最近の生殖医療のトピックス
    2011 年 28 巻 4 号 p. 198-202
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/10
    ジャーナル フリー
    精索静脈瘤は男性不妊症の原因で最も頻度の高い精子形成障害のうち30%を占め,手術治療が標準治療として行われてきた.コントロールスタディやメタアナリシスでは精索静脈瘤手術後の精液所見や妊娠率の改善は必ずしも明らかにされていないので,適応は個々の症例ごとに検討すべきである.手術治療は補助生殖技術より経済的に優れており,特に大きな精索静脈瘤のある若年不妊症男性には自然妊娠のために有用であると考えられる.合併症と再発が少ない顕微鏡下低位精索静脈結紮術が推奨される.
総説
  • 中村 勇士, 今川 和彦
    原稿種別: 総説
    2011 年 28 巻 4 号 p. 203-218
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/10
    ジャーナル フリー
    哺乳類の子宮や胎盤では,多数の内在性レトロウイルス遺伝子が特異的に発現している.ヒトではSyncytin 1, 2が,マウスではSyncytin A, Bが,胎盤の形成に必須である栄養芽細胞の融合に関わっていることが明らかになってきた.ウサギやウシでもそれぞれに融合能を持つと思われる内在性レトロウイルス遺伝子の胎盤特異的な発現が確認されており,胎盤の獲得と進化の要因として内在性レトロウイルスが注目されてきている.しかし,有胎盤哺乳類の出現が1億年以上前であるのに対し,これらの内在性レトロウイルスが獲得された時期は1200万~4000万年前の間とみられており,時間的に大きな隔たりがある.本稿では,近年の研究で明らかになってきたこれらの内在性レトロウイルスの発現動態の共通性を紹介し,既存遺伝子から内在性レトロウイルスへの機能の譲渡(バトンタッチ)という考え方を用いてこの時間的な隔たりを埋めてみたい.
原著
  • 羽鳥 暁子, 高橋 郁恵, 中野 英之
    原稿種別: 原著
    2011 年 28 巻 4 号 p. 219-223
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/10
    ジャーナル フリー
    紡錘体可視の可否や,紡錘体の位置の違いによる胚発生への影響を検討した.2009年6月から2010年6月の間にICSIを施行した109症例,144周期から得られたMII期卵830個を対象とした.紡錘体が可視できた卵をX群とし,X群の中で紡錘体の位置が極体の直下,時計回りに0°<,≦45°,45°<,≦90°,90°<,≦135°,135°<,≦180°にあったものをそれぞれA,B,C,D,E群とした.紡錘体が不可視であった卵をY群とした.A~E群,Y群の割合はそれぞれ57.4%,38.5%,3.5%,0.5%,0.1%,27.9%であった.X群における受精率,良好胚形成率,胚盤胞形成率,良好胚盤胞形成率はそれぞれ70.6%,48.3%,41.5%,5.2%,Y群における受精率,良好胚形成率,胚盤胞形成率,良好胚盤胞形成率はそれぞれ65.9%,47.7%,29.5%,4.2%であり,受精率,胚盤胞形成率に関しては可視卵が高い傾向にあった.ICSIにおける紡錘体可視化は意義のある方法であることが分かった.
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