1994 年 11 巻 2 号 p. 210-215
体外でのブタ卵母細胞の成熟と, 体外受精後の精子侵入, 多精子侵入及び雄性前核形成に及ぼす卵胞細胞と卵胞液の影響を検討する目的で, 実験を行った. 成熟培養の基本培地はTCM-199を用いた. 実験には4区を設け,(1) 対照区では基本培地のみで培養を行った. 他の区では同液に,(2) 卵胞細胞,(3) 卵胞液,(4) 卵胞細胞+卵胞液をそれぞれ加え, これらの条件で卵母細胞を47時間培養した. 成熟培養後, 半数の卵母細胞は固定し, 残りは媒精に用いて受精状況を調べた. 卵母細胞の第II減数分裂中期へ発育した割合及び媒精後の精子侵入率において実験区間有意差はなかった。多精子侵入率は, 他の区に比べて卵胞液を添加した区で低くなった. 雄性前核形成率においては, 卵胞細胞+卵胞液の添加区で有意に高い値を示した. これらの結果から, 成熟培養時に卵胞液を加えることによって多精子侵入が減り, 卵胞細胞と卵胞液を共に加え, 雄性前核形成率が高くなることから, これら物質には相乗作用があると考えられた.