2026 年 22 巻 2 号 p. 42-50
本稿は、多様な「働き手」や「働き方」が受容される現代における「新しい協働」のあり方を、ジョブ・クラフティング(JC)の観点から検討する。JCから検討するのは、JCが個人が自らの仕事の境界を能動的に変更し、仕事における自分らしさやオーセンティシティ(authenticity at work)を高める方略と捉えることができるためである。既存研究は、JCがワーク・エンゲイジメント、仕事の意義、ウェルビーイング、パフォーマンスなどに正の効果をもたらすことを示してきた。しかし近年の知見は、すべてのJCが望ましい結果をもたらすわけではなく、特に回避志向/予防焦点型のJCが職務満足やエンゲイジメントを低下させたり、同僚の負荷増大やコンフリクトを招いたりする可能性を明らかにしている。また、接近志向/促進焦点型のJCであっても、過度な自己志向性や抱え込みが周囲から否定的に受け止められるリスクも指摘されている。こうした副作用への対応として、上司や組織による「共有支援」や「方向づけ支援」を通じたJCのマネジメントが今後重要となる。さらに、新たな概念として提示された協同志向JCは、他者の強みや動機を踏まえて仕事の境界を共同で再構築するものであり、「私たち」を活かす協働の実現につながる可能性を秘めている。以上のように、本稿では、JCを個人の自発的行為にとどめず、協働やマネジメントの視点から再検討することで、多様性を反映した「新しい協働」の展開に向けたJCのあり方が提示される。